パリ・セーヌ河左岸沿いにある
「レ・ブキニスト Les Bouquinistes」は、ミシュランの星つきレストランのシェフ、ギイ・サヴォア氏の手によるビス(セカンド)レストランだ。店名はセーヌ沿いに屋台を出す古本屋をブキニストと呼ぶことに由来したかはわからないけれど、とにかくこの夜も大盛況。9時半で予約を入れたのに前半のお客さんがひかなくて1時間以上並んで待った。ギイ・サヴォワ氏は他にも数店舗ビスレストランを持っているけれど、どこもこんな感ではやっているらしい。その前の年にオープンほやほやのラトリエ・メトル・アルベールを訪ねたときには、後半組がくる前までならという条件で入ることができたほど。
基本は田舎旅が好きで、地方料理が楽しみだけど…勝手なもので、それがずっと続くと都会の洗練された味を求めてしまう。一人旅では高級店に行くのは憚られることは百も承知で突入した。とても勇気のいることだった。現地人との触れ合いを求めていても、大都会のスノブな世界では勝手が違う。女性がひとりで食事なんてこの国ではビザール(奇妙)なのだ、しかも東洋人。同じように列を作っている周りのカップルにサービスされたシャンパーニュも、最後まで私にはまわってこなかった。くやしいけれど、おいしいものの前には忍耐が必要だとこらえた。(あまりの忙しさに忘れただけかもしれない、と思うことに。雰囲気は決して悪くないし。)
やっぱり待った甲斐があった。やっぱり座った者勝ちだ。ここからはすべてがおいしい時間であった。こちらは全てアラカルトメニュー、中には本店と同じ料理がオンリストされており、当たり前だけど本店より安い。
正式なメニュー名は忘れてしまったけれど、前菜には牡蠣のスープ仕立て…流行の泡で覆うもので、ケッパーの何とも言えない塩旨味がぷりぷりの牡蠣をより引きたて、海草入りのパンで潮の香りを誘う。
メインは仔羊の腿肉ロースト、手打ち麺添え。フランス産の仔羊肉はBSE問題以来日本に入ってこなくなったから、フランスにいる間はチャンスがあれば食べていた。臭みがなく味のある仔羊は、やはり日本で食べるものと違う。ジーンズで入れるカジュアルなビス(セカンド)店といっても、洗練された料理には違いない。
グラスのシャンパーニュ、ワイン、水、デザート、コーヒーを飲んで79.2ユーロとまずまずの値段。12時前に店を出るとセーヌ沿いにライトアップされたパリの町が美しい。こうやってカップル客はどこかに消えていくんだろうな(苦笑)。うーん、東京のロブションのビス。。ラトリエ・ド・ロブションなんかも情緒ある場所にあれば帰りも楽しいのに…。