第十七夜 T.ルパンの話
T.ルパンという会社の仕事をしました。
この会社、実体は社長一人の個人会社。
だから 「ちょっとトラック、貸して!」だの 「現場の留守番頼む!」だの雑用ばかり押しつけてくるんです。
まあ、お客さんだし、仕事が終わってお金をもらうまでは、「はいはい」と聞いておくしかないよね。
しかし、やっぱりと言うか、この人、工事が終わっても代金を一部しか支払わず、
「ちょっと待って」 「もう少し待って」 とズルズル一年位、引き延ばし続けたのです。
決して 「払わない」 とは言わない。だから仕方なく待ってあげた。
・・・そんな年末。
「もう、いい加減に代金払ってくれ!」と、夫が事務所に押しかけ、強引に小切手をもらってきました。
全額ではなかったけど、「まあ、後は年を越してからまた…」と、とりあえず夫は戻ってきたのです。
「あの社長、結構、羽振り良さそうだったぞ。なんか羽根のついた洋服着て」
羽のついた洋服? なに? それ。
年が明けた。夫から電話。
「T.ルパンの社長、自殺した…」
「え!?」
私は正月休みが明けて、何度か彼の会社に催促の電話を入れていたんです。
そのたびに留守電だったけど。
昨日も留守電のメッセージで社長の声を聞いたばかり。
本人はすでに亡くなっていたのに、メッセージだけはいつまでも流れ続けていたのか…
なんか無気味な世界…
この世から人間が一人もいなくなっても、テレビやラジオのタイマーは作動し、勝手にスイッチが入り、エネルギーの供給がある限り、機械たちは黙々と作動し続けるのか。
誰もいない野原で花を摘んでいた、〃天空の城ラピュタ〃のロボットを思い出した・・・

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