第二十五夜 清志郎の話
子供たちと夕食を食べていたら、夫から電話。
かなりアセっています。現場で家具に取り付けるはずのコンセントがないというのです。
どうやら、社員が注文するのを忘れていたようなんです。
それが特殊なもので、メーカーにしかない。
その日はあいにく土曜日で、どこも休み。
それでも、あちこちの電気屋を探してみるけど見つからないって。
明日が引き渡し。どうしても今日中に探さねば…というので
知り合いの電気工事屋さんに電話してみました。
「もしかしたら、倉庫にあるかも…」という返事。すぐにタクシーをとばしました。
夜遅かったにもかかわらず、社長さんはいっしょに暗い倉庫の中を探してくれました。
が、見つかりませんでした。
仕方なく自宅へ戻ると、夫から電話。
「仕方ない。オレ、もう帰る。疲れた…」
時計の針は、深夜を回っていました。
(私も疲れたよ…)
翌日、前から予定していたロックミュージシャンの忌野清志郎のライブに出かけました。
彼は私より年上だけど、相変わらず元気のいい〃おじさん〃だ。
ロックのリズムに、おもいきりブレイクして、キヨシロー様の歌を聴いて、しばし現実逃避。
ラストのアンコールで、清志郎さんは、両腕にいっぱいのコスモスを抱えて出てきました。
アンコール曲を歌いながら、彼は一本ずつ、客席にコスモスの花を投げ込んでくれました。
いつもだったら、お客さんの方からステージへ花がいくんだけど。
逆に、こうやって貰うってのもいいな。
清志郎の歌。
コスモスのピンク。
すっかり落ち込んでいた心に彩りを与えてくれました。
元気、出そう!
おまけの話
この清志郎のライブ、実は、繁華街のパチンコ屋の五階のライブハウスでありました。
その日、ライブハウスはsold out。
ライブが終わって、みんな、まだまだハイな状態。
私も頭ん中はピンク、ピンク。
出口へ向かう人の波に、ほわんほわんとついて行ってました。
ん? なんだか私の前にいる人、誰かに似てる。この頭の白髪状態。見覚えある。
…そうだ! あいつだ!
今日、大阪の現場に入っていた社員のSが、突然、九州へ戻って来ました。
奥さんのお父さんが〃危篤〃だと言って。
そう言えば、前から「具合が悪い」と言っていた。かなり高齢でもあったような。
奥さんから至急帰るよう連絡があったそう。
「それはそれは…」と同情しました。
香典の心配もしました。
ところが今、そいつが私の前を歩いている。〃父、危篤〃の社員が…。
えっ? えっ? お父さん危篤で清志郎のライブ?
おや? 隣にいるのは…。
奥さんだぁ!!!
なんだぁ…?
なーんと、奥さんもグルになって、この「このライブのために夫を呼び戻したのでした。
自分の父親を危篤にして…。
うーん…
彼はその後、奥さんの実家へ入り、姓が変わりました。
〃危篤〃のお父さん、その後、ずっとお元気でしたが、最近、本当に亡くなりました。

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