★解散★
第二十七夜 我が家が工場になった話
ますます景気は悪くなっていきました。
夫は九州に戻って来たものの、家族とともに生きていくためには、仕事をしなければいけません。
幸い、何となく昔のツテで、ぼちぼち改装工事の仕事はありました。
いっぱい、ひっかかってはきたけど、支払のほうは借金してでも払ってきたので、なんとか仕事はしてもらえました。
結構、みんな同情的。〃ヒトゴト〃ではないか。
こんなとき、夫の人柄の良さは救われます。
「がんばってください」
と、励まされるそうな。
私も、電話で事情を説明し、分割払いのお願いを・・・
「もう、これで不渡り四回目なんですよ。今回だけなんとか…」
と、こちらがお願いすれば、
「あら、うちは五回目ですよ」
と、むこうの奥さん。お互い、ためいきをつき、同情し合ったりして。
商売というもの、もらうお金は、なかなか増えません。その上、値引きはしょっちゅう。
利益を出すためには、払うお金を押さえるしかありません。
というわけで、私は、〃内職おばさん〃になったのです。
その一、 焼鳥屋のクッション百個。
これを外注せずに、我が家のミシンでレザー張りすることにしました。
正方形の箱形のクッションカバーを縫って、型にかぶせればオーケー。
縫い方はいたって簡単。
ただ、うちの家庭用ミシンで、果たしてレザーが縫えるかどうか…
一番太い針に替え、ステッチ用の太い糸を通し、試しに縫ってみました。
イケる! よしっ。
けどね、その前にレザーの寸法を測って、カットするのが大変でした。
リビングのテーブルを片づけ、フローリングの床にダーーーッと、レザー布を広げ、物差しで測って印を付け、ハサミで切って、これを百枚作る。
えーい、今日は出前とって頑張るぞ!
夕食もそこそこに夜遅くまで、リビングは縫製工場になりました。
納期はあさって。布はギリギリしかないから、寸法を間違えたらおしまい。
神経も使う。頭はガンガン。脳ミソぐちゃぐちゃ。でもこれで、外注代金が浮く。
なんてったって、材料代だけだもん。がんばるぅ〜!
どうにか納期に間に合いました。
段ボールに詰め、航空便で現場へ!
いっちょあがり!
その二、居酒屋の〃のれん〃三枚。
その三、イタリアンレストランのテーブルクロス十枚。カーテン三枚。
その四、カラオケのソファーのカバー六枚。
しばらくの間、我が家はさながら内職工場でした。

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