5:ギルドカード
『…リアノ、貴方はリアノと言うのですか』
嵐の前の静けさというか、なんというか。ユキは心配の目で、俺は驚きの隠せぬ目でその母火竜を見ていた。
「ああ、そうだが」
この火竜への謎を押さえ、冷静な声で俺は答えた。
『・・・まだ少年時代のころ"風の鬼陣(かぜのきじん)"に誘われたという・・・』
雌火竜はそういい掛けて、また俺のほうをまじまじと見る。
"風の鬼陣"
それは、風のようにすばやく、鬼のように冷酷な4人組。すべては最強のモンスターを華麗に狩るために編成されている。
"ハンターは感情を持たない"というのが、風の鬼陣の決まりごとの一つでもあり、戦闘中に死するのはただ己の力かモンスターに及ばなかった
だけだという、非道な集団なのである。もちろん、このチームに入るにあたってハンターにはそれなりの強さが求められている。
今から数年ほど前、メンバーが数人死んだとかで誘われたが、そんな厄介な集団に俺が入るはずもない。
「・・・まあそれは昔の話だがな。・・・しかし、それがどうした」
『・・・いえ、前から貴方の腕はどれ程かと』
「それは今分かることだ。・・・俺はお前が何故話せるのかのほうが気になるが」
『それは冥土の土産にでも聞いて置くつもりですか」
俺と母火竜は今にも戦闘をおっぱじめようかとしているそのとき、必死になってユキは母を止めていた。
「戦うことないんてない・・・・!もうこれ以上お母さんを汚したくないッ!」
『黙りなさいユキ。彼はハンターですよ、私を目の前にしたこんな状況で逃げ帰るなど、絶対にしないはずです。それは"私がよくわかる"」
"汚したくない"・・・?
俺はユキや母火竜の会話の意図が読み取れずにいた。レイアならハンター殺しなどお手前だろうし、餌にしか見えないのではないか。
ましてや、これが彼女たちに因果があるのかもわからない。
『ユキ、どきなさい!リアノ、貴方の実力で私の尻尾ぐらい切り落としてみせなさい!』
そう言うと、母火竜は俺の元へと突進してきた。典型的なリオレイアそのものの動き。俺は軽く左へ回転しそれを回避した。
「うおぉおああッッ!」
俺は太刀を水平にし、ランスのようにレイアの体に刺そうとした。しかし、レイアは回転で俺ごとそれを弾いた。
『こんなものですか、貴方の腕は』
・・・このレイアなかなか・・・ッ!
ムキになってきた俺は、レイアの目の前に閃光玉を投げ捨てた。この玉を投げると辺りが一瞬光り、相手の目を暗ませるものだ。
『卑怯な・・・・!』
母火竜は見事それに掛かった。
「卑怯も何もない。ハンターの知恵の塊でできた道具なんだよッ!」
俺は思い切りレイアに飛び掛った。
その時、ユキが俺の前へと飛び出した。
俺は思わず足を止める。ユキを刺し殺してまで母火竜を殺るのはさすがに良心が痛む。
「お前は、お前は法律違反の"ハンター殺し"をしようとしている!」
ユキの瞳から小さな涙がいくつか流れ落ちるのと同時に、とある小さなカードを俺に手渡した。
「・・・?ハンター殺しだと?」
ハンター殺し。それは、全てのハンターの中でいくつか決まっている法律の一つだ。ハンター同士で殺し合いをしてはならない。ということで、これを破るとハンターをやめざるをえなくなる。ほかにもアイテムにはレベルが定めてあり、レベル4以上のアイテムは他人に渡せない、武器をあげることもできない、などが定められている。
『おやめなさい!ユキは下がっていなさい!』
目が眩み、ぐるぐると回転しながら母火竜は言った。しかしユキの瞳は鋭く死ぬ覚悟すらできてると言える瞳だった。
その薄汚れた小さなカードをよく見てみると、それはギルドカードそのものだった。
「ギルドカード・・・なのか?」
このギルドカードの持ち主の名はアカネ、ハンターランクは6、勲章やキングサイズの記録などがほとんどついている。
「それは母のものだ」
そのユキの言葉に俺は固まった。

0