6:リタイヤの土産に
「そうだ、それは母のものだ」
ユキはもう一度同じ言葉を繰り返した。それは冗談として言っているようには決して見えなかった。
『・・・ユキ、まだそんなものを持っていたのですか・・・』
母火竜は閃光の効き目が切れたようで、まっすぐユキを見ていた。
それを見た俺はとっさに太刀を構えた。
「まだやるか?アカネさんとやら」
アカネ、それはギルドカードに書いてあったハンターの名前。本当にこのレイアがギルドカードの"アカネ"であるのかは定かではない。
『・・・いえ、リアノが"ソレ"をみてまだ戦いたいというのであればお受けしましょう』
その言葉を聞いて俺はすぐに太刀を鞘へと納めた。ハンター殺しと言われてまで戦いたくはない。俺達狩人にとって、ハンターの法を破るのは、ハンターとしてのプライドを捨てているようなものだ。そこまでして紅玉が欲しいとは思わない。
今になって分かるユキの"汚したくない"という言葉。母火竜は自分達を守るために幾人ものハンターを倒してきたのであろう。母がこれ以上ハンターとしてのプライドを捨て、人間としての心を捨て人間を殺すという行為をさせたくなかった。母の手を汚したくなかった。ということをユキなりに分かっていたのであろう。
「…それは本物ということを認めるのか」
俺は母火竜・・・いや、アカネが先ほど俺へと問いた「"ソレ"を見てまで――」という発言。それは自分のギルドカードと認めているといっても過言ではないだろう。
『ええ』
アカネは素直に頷いた。
こうなるともうどうしようもない。レイアが狩れないのであれば、もうこのクエストにも用はないのだ。
・・・しかし、クエストの残り時間30分程度、それに俺は未だに彼女達の実態をつかみきれていない。このまま何も無しに帰るのも惜しくなってくるものだ。
「・・・過去を聞かせてくれないか」
俺は彼女達へそう呟いた。
「君達の過去が知りたい。その過去を他言したり、笑ったりは決してしない。君達の過去を聞いたら俺は即座にこのクエストをリタイヤし、
もう君達とは会わないと誓おう」
もう一度強い声で彼女達へとそう要求した。
しばらく沈黙が続く。
アカネは考え込んでいるのか、じっと俺を見つめているだけだった。その真っ直ぐな視線を俺は逃さずにいた。
『――いいでしょう』
しばらくしてアカネは妥協したかのようにそう呟いた。
「お母さん・・・」
心配そうにユキはアカネを見つめた。
『しかしこちらにも条件があります。全てを話した後、集会場でこのクエストを何とか取り下げるよう言ってもらえませんか』
「・・・努力しよう」
俺はその場に座り込み、アカネの言葉に強く頷いた。ユキもその様子をみて安心したのか、アカネの隣で腰をおろした。
『...それでは少々長いですがお話しましょう。
あれは、2、3年ほど前の話です――――』

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