森の奥へと一歩、足を進めるごとに
木々が日の光を遮ってゆく。
暗くなっていくと共に、森が魔物の住処へと
変わって行くのが雰囲気で分かる。
「むっ!?」
鋭い殺気に振り返る。
「きたか!」
そこにいたのは熊ではなく、オオカミだった。
しかしティルコにいるオオカミより、一回りは大きい。
それでも、所詮はオオカミである。
ティルコのと行動パターンが同じなので
難なく倒すことが出来た。
私は臨戦態勢を保ったまま、辺りをうかがう。
また殺気だ!しかし今度のは、冷たい刺すような殺気だ。
振り返ると、ウィスプと言われる悪霊が浮いている。
こいつは初めての相手だ。どんな行動パターンなのだろう?
とりあえず、IBCで様子を見ることにした。
IBCというのは、魔法カウンターの一種で
アイスボルトという魔法と、カウンターを交互に行う
戦闘の基本とも言うべき戦法だ。
他にも、アタックカウンターやアタックディフェンスなど
アタックを軸にした戦法もある。
私はいつも、初見の相手にはIBCで行くようにしている。
IBを2発打って、すかさずカウンターの体制に入る。
「!!」
相手が警戒しながら、私の周りを飛ぶ。
これはオオカミで言う、ディフェンスの状態とよく似ている。
そこですぐさま、スマッシュに切り替えて相手に叩き込む。
相手が吹っ飛んだ隙に、IBを唱え
起き上がろうとするウィスプに発射する。
ウィスプが仰け反るのを確認しながら、カウンターの準備をする。
「!!!」
今度は、声とも音とも取れない言葉を発しながら
ウィスプが一瞬光った。
と同時に、こちらに向かって突進してきた。
これはオオカミで言う、スマッシュの行動パターンだ。
案の定、私の周りを高速で回転したが
カウンターの餌食になり、飛ばされていく。
ウィスプは地面に落ちたまま、それきり動かなかった
「死んだのか・・・」
カウンターの手ごたえから、明らかに
オオカミよりも1ランク上の、攻撃力だと分かる。
「これが村長の言ってたウィスプか・・・」
息を整えながら、村長の言葉を思い出していた。
すると、森の奥からものすごい地響きが近づいてくる。
まるで雑草が倒れるかのごとく、大木がなぎ倒されていく。
これは・・・間違いない・・・奴だ!
木々を押し倒して現れたのは、真っ赤な目と体をした
巨大な赤熊だった。
私の2倍以上はあるであろう、巨体を震わせ
威嚇するかのように吼えている。
この大きさだと、IBは通用しないかもしれない。
本能的にそう感じ、ここはFBCで行くことにした。
FBとはファイアボルトのことで
詠唱した回数だけ、威力が増していく
強力な攻撃魔法である。
そのため、詠唱時間がIBよりも長くなってしまうのだ。
FBを5回詠唱してみたが、熊は一向に動く気配がない。
どうやら、私のことを警戒しているようだ。
そこで、FBの前に1発スマッシュをお見舞いしてやることにした。
すると、今までに数回しか感じたことの無い手ごたえが
剣を通じて流れ込んできた。
クリティカル!!
私の放ったスマッシュが、熊の急所を
見事に貫き、崩れ落ちるようにして倒れた。
いつの間にか、遠巻きに集まっていた木こりたちが
口々に呟いているのが聞こえた。
「一発で熊を倒した!」
まるで神を崇めるかのような眼差しで、私に近寄ってくる。
「一発で熊を倒した帽子屋の次女!」
悪くない響きである。
ダンバートンに着いたら、そう名乗ることにしよう。
私は熊のそばに落ちている、赤熊の魔符を手にし
トレイシーの待つ伐採場へと向かっていった。

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