私がトレイシーの元に戻ると
一瞬驚いた表情を見せた。
どうやら、私が倒せると思っていなかったらしい。
私は、それに気づかないフリをしながら
トレイシーに赤熊の魔符を渡した。
「さすがは次女ちゃんだ。
次女ちゃんならやると思ってたよ。」
よく言うよ。私が生きて帰ってきて
驚いてたくせに・・・
「何とか倒すことが出来たよ。」
私はしおらしいフリをした。
まぁ実際、スマクリが出なければ
どうなっていたかは分からなかった。
「それじゃ〜約束通り、スキルを教えてやるよ
よく見て覚えるんだぞ。」
そう言うと、トレイシーは気合を入れた。
「はっ!」
掛け声と共に、トレイシーは後ろに飛んで倒れた。
「 ・ ・ ・ 」
ん?
それから?
え?
あれ?
これで終わり?
私が呆然としていると、トレイシーが
得意げな顔をして、起き上がってきた。
「どうだい、すごいだろう!」
何がどうすごいのか、一向に分からない・・・
「死んだフリって言うスキルだ。
名前は格好悪いが、これさえしていれば
敵は、こっちが死んだと思って襲ってこないのさ!」
う〜ん、これは本当に使えるスキルなのか?
私は一抹の不安を覚えたが
とりあえず覚えておくことにした。
「さあ!一回ここで練習してみな!」
「え?ここで?今?」
「そうさ、いざという時に出来なかったら
困るだろう?だから今練習しておくんだ。
うまく出来なかったら、俺がコツを教えてやるよ。」
「 ・ ・ ・ 」
トレイシーの言うことも、もっともなのだが
人前でこれをやるには、かなりの勇気と
私の中の『女としての何か』を失ってしまう気がする。
しかし、やるまではここから先に進めそうに無い。
私は意を決して、やってみることにした。
強くなるためには、女であることを
捨てなければいけないのかもしれない。
「えいっ!」
勢いがつきすぎたか、後ろに飛ぶ時に
体が回転してしまった。
べちゃ!
モロに顔から落ちてしまった ・ ・ ・ 痛い ・ ・ ・
「あははは!それみろ、練習でよかったな
本番でそうなってたら、死んでたぞ。」
言い返す言葉も無い。
というか、いろんな意味でかなり痛い。
一度、人前でやってしまうと恥ずかしい気持ちは
消えてしまっていた。
もう一回やってみる。
今度は力をうまく抜いて飛んだので
回転はしたものの、背中から落ちることが出来た。
なるほど背中からだと、落ちた時に後頭部さえ
打たなければ、それほど痛くは無い。
「そんな感じでいいだろう。
それと1つ言っておくが、これはスキルだから
死んだフリをしてる間中ずっと、スタミナを消費しているからな。
起き上がったときに、スタミナ切れで
攻撃が出来ないってことも、ありうるから気をつけろ。」
伊達に自分で考えたわけではなさそうだ。
ちゃんと欠点のことも分かっているらしい。
とりあえず、トレイシーにスキルのお礼を言って
ダンバートンに向かうため、伐採場を後にした。

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