罰としての性器切断
これは、法令で定められた刑として行われる場合と、体罰あるいは私刑として行われる場合がある。
[編集] 正式な刑としての性器切断
刑罰としての男性器の切断は、身体刑としての切断部位がたまたま男性器であった場合、性犯罪の報復刑または予防刑としての性格を持つ場合、連座刑として、子孫を絶つ目的で行われる場合がある。
性犯罪の予防としての去勢刑は、被告人による懲役刑との任意の選択として、現在でもアメリカ合衆国の一部の州で執行されており、多くは薬物注射による去勢であるが、テキサス州では、手術による、睾丸切除も認められている。最近の執行例としては、1997年と2007年に行われている。
刑の執行は、切断方法によっても大きく3種類に分類され、睾丸を除去し去勢する方法、陰茎を切断する方法、そしてその両方を伴うものがある。
一般によく知られている中国の宮刑は、両方とも除去した「完全去勢」がほとんどであった。また15世紀のアフリカ大陸のモシ族の宦官は、陰茎のみ切断される「羅切刑」を受けた罪人出身者であった。
陰茎に血液を供給する動脈には陰茎背動脈、海綿体動脈、球部動脈、尿道動脈があるが、羅切刑では、切断部位によってはこれら全てが切断される。順流で血圧の高い動脈からの出血を止められないと死に至る(陰茎には静脈洞である海綿体があるが、血圧の低い静脈からの逆流を止血するのは動脈より容易)。うまく止血できたとしても、傷口から入った細菌により感染症で死亡することもある。失血死や感染症による死亡は、睾丸摘除においても同様に起こり得る。
また、宦官手術の際、術中術後の尿道確保は必須であり、宦官への登用見込みのない受刑者の場合にはそうした処方がなされないことも少なくなく、尿道閉鎖によって排尿不能となり、腎不全から死亡するケースもあった。このように、身体の一部を切断するこれらの刑罰には死の危険が伴っていた。
なお、中国では、古来から身体を無闇に傷付けることはもっとも非倫理的な行為であると考えられ、死後も家族の墓へ埋葬されることはなかった。また、去勢は子孫繁栄を不可能に到らしめるものであり、歴史の中では死刑よりも重い位置に置かれることもあった。特に重罪とされた場合には、主犯を死刑に処し、その家族らを宮刑とした。すなわち、事実上の「御家取潰し」である。
日本にも宮刑は存在した。「皇帝紀抄」によると、1207年に法然の弟子である法本坊行空と安楽坊遵西が、女犯の罪で羅切の刑に処せられたとの記録がある。また「後太平記」によると、「建武式目」には、男性のみならず女性への宮刑も定められていたという。
[編集] 体罰としての性器切断
実際の切断を伴わずとも、脅しとして扱われるケースはしばしば見られる。これらには上記のような家系的・殺傷的な目的は通常含まれていないと考えるのが相当であるが、一方でそうした脅しや体罰を試みる背景にはサディズム的な性器切断としての心理が働いていると解釈できる。
正式に宮刑という去勢刑が存在した中国においても、権力者による私刑の例がある。唐の歴史書「旧唐書」によると、安禄山には12〜13歳の契丹人の少年、李豬児が仕えていたが、彼は一筋縄ではいかぬ悪賢い子であったため、もとより短気であったと伝えられる安禄山は、ある日、立腹の余りに突然、李豬児の衣服を剥ぎ取り、その生殖器を切り落として完全去勢した。李豬児は大量出血で仮死状態となったが手当の結果一命をとりとめたため、以降宦官として用いられたという。なお、この一件とは関係無く李豬児は安禄山の稚児的存在として仕えていた記録があり、著しく巨体である安禄山の帯を締めるなど、世話係をしていたとも伝えられている。こうしたことから、あるいは私刑からは離れた性的サディズムにおけるものであった可能性も否定はできない。
一方、昭和20年代の日本でも、千葉県加曾利町(現・千葉市若葉区加曾利町)にあった「旭療護園」という精神薄弱児施設で、性的非行・犯罪を犯した10代後半の4人の男子入園者が、極秘裏に去勢された事件があり、それが判明してから大きな人権問題となった。
また、同じく千葉県船橋市の児童養護施設で起きた恩寵園事件ではマスターベーションなどに対する体罰の目的で男児2名が当時の園長によって性器の一部を切られるなどしている。
筒井康隆の短編小説『悪夢の真相』には、ハサミを持った怖い女の人がいるのでトイレに行けないという男の子が登場する。ことの真相は、彼がしばしばおねしょをするために母親が「おちんちんを切ってしまう」と脅したことに起因し、これにより彼の中で築き上げられた悪夢による幻影が正体であった。すなわち、その「怖い女の人」の持つハサミは、男の子の性器を切断するための道具であった。
[編集] 私刑としての性器切断
怨恨や嫉妬、或いは恋愛のもつれなどの理由によって衝動的ないし計画的に行われることがある。恋愛や嫉妬に絡んだ私刑の場合、切断する相手を他の人物に渡したくない、あるいは相手が他の人物のところへと行くことに憤りを覚えるか、もしくは相手自身を手元に残しておきたいという衝動から行われ、性に直結する由緒がある。こうした事件は日本では阿部定事件が知られており、この類の事例は世界各地で枚挙に暇がない。
恋愛関係や嫉妬の対象が巻き込まれるとは限らず、インドでは2004年、結婚の持参金を断られたことを理由に相手の女性を殺害しようとして未遂に終わり、代わりに7歳の弟が性器を切断されて重態となった例もある。
一方、恋愛関連以外では2004年、タイで金銭を窃盗した少年たちが、盗まれた男性に捕まり、性器を切断される事件が起きている。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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