おそらく「ガンダム」ファンなら一度は考えた事があるファースト劇場版三部作の音楽をCD1枚分にまとめるという企画。全曲収録したCD(4枚組)は発売されているが、映像がないとシンドイ曲も多いので聴き心地の良い選曲にしたかった。今やらないと一生やらないだろうなと思って無理してチャレンジ。まず「ガンダム劇場版総音楽集」CD3枚を聴き直して、それから本編DVDをパソコン画面で再チェック・・・とんでもない作業量だが、まったく知らない状態からやる訳でもないので記憶の曖昧さをクリアにするだけ。
映画「機動戦士ガンダムT」より
01 序曲
03 サイド7 (作編曲:渡辺岳夫)
04 ジオンのザク (作編曲:渡辺岳夫)
05 走れフラウ・ボゥ
06 立てガンダム〜逃がすものか
07 シャア登場
12 赤い彗星のシャア〜これが戦い
14 宇宙漂流記 (作曲:渡辺岳夫/編曲:武市昌久)
16 ホワイトベースのテーマ
22 ガンダム空中戦 (作編曲:武市昌久)
23 マチルダさん (作編曲:渡辺岳夫)
29 ザビ家のテーマ
35 マチルダへの憧れ (作編曲:渡辺岳夫)
36 ギレン・ザビの演説〜エンディングT
38 スターチルドレン (作曲・歌…やしきたかじん/編曲:飛澤宏元)
映画「機動戦士ガンダムU/哀戦士編」より
02 ダイジェスト
19 戦場で (作曲:渡辺岳夫/編曲:久石譲)
20 風にひとりで (作編曲・歌…井上大輔)
25 ジャブロー基地
31 哀戦士 (作編曲・歌…井上大輔)
32 エンディングU
映画「機動戦士ガンダムV/めぐりあい宇宙編」より
01 メインタイトル
05 白い奴ガンダム
09 父との再会 (作編曲:渡辺岳夫)
22・23 ゲルググ出撃
27・28 シャアとセイラ (作編曲:渡辺岳夫)
35 スレッガーとミライ (作編曲:渡辺岳夫)
43・44・46・47 エルメスのララァ
57 ビギニング (作編曲・歌…井上大輔)
63 ジオング出撃
66 宇宙戦争
74 めぐりあい (作曲・歌…井上大輔/編曲:鷺巣詩郎)
テレビ「機動戦士ガンダム」より
いまはおやすみ (歌・語り…戸田恵子=マチルダ)
で、出来たMDのメニューがこれ。MナンバーだとややこしいのでCD収録番号で書いてます。BGMタイトルは僕が勝手に付けました。( )表記のないBGMは全て作編曲:松山祐士です。約69分で、余った時間に「いまはおやすみ」(セリフ入り)を入れて約73分。
▲劇場版第1作サントラ(赤い彗星のシャア)
「劇場版総音楽集」の曲順は入れ替えずそのまま使う事にしました。こういうベストは完成してからも判断ミスはないかと何度もチェックし直すのですが、結局これで納得。「ガンダム」マニアにも初心者にも楽しめるメニューになったと思います。
劇場版「ガンダムT」はテレビ版BGMのリメイク曲が多く、僕もシーンの重要性より名曲集という感じで選曲しています。BGM「サイド7」は平和な感じのブリッジ曲でテレビ版でも多用。短くてもこれをカットすると「序曲」の後にいきなり「ジオンのザク」(ジョーズのテーマ風の曲で「U」「V」にも流用)になってしまうので残した。BGM「走れフラウ・ボゥ」と「立てガンダム」はテレビ版アルバムでは「悲愴、そして決然と」という1曲でBGMの最初に配置されていた重要曲。
BGM「逃がすものか」の原曲タイトルは「颯爽たるシャア」で、実際テレビ版ではシャアが赤いモビルスーツで攻撃してくるシーンの定番曲だったが、劇場版ではガンダム初戦に使われて終わり。シャアザクにもガンダムにも使える便利な曲なので多用しすぎたからかな? テレビ版の第1話に相当する部分の音楽はほとんどカットできない。BGM「シャア登場」はテレビ版のサブタイトル曲やアイキャッチ曲をアレンジしたブリッジなので残した。
上記の理由からかBGM「赤い彗星のシャア」は劇場用新曲になっている。ガンダム対シャアザクの初戦に流れるBGM「これが戦い」は元々は「序曲」とセットで「長い眠り」という曲だった。つまり、戦士として覚醒するアムロを表現している訳です。悪の企みや潜入シーンに流れるようなサスペンス曲は鑑賞用アルバムでは退屈なのでバンバン切っています。
BGM「宇宙漂流記」は原曲タイトルが「ジオンの脅威」なんですが、ちょっと曲自体のイメージと違うので「十五少年漂流記」(「ガンダム」の基礎になっている冒険小説)を意識した曲名にしました。テレビ版では永井一郎ナレーションのバックに流れる事が多く、地味ながら印象深い曲。劇場版第1作のサントラ盤は2枚に分かれていたので、この曲(アルバムタイトル「無限空間」)が1枚目に入ってなくてガッカリしたものです。戦場と化したサイド7からなんとか脱出したものの、民間人を乗せたままの戦艦ホワイトベースは地球連邦軍本部ジャブロー基地までの長い旅を強いられる事になった。
続くBGM「ホワイトベースのテーマ」の原曲タイトルは「戦いへの恐怖」で、ホワイトベースからガンダムが出撃して戦闘を繰り広げるまでを表現している名曲。映画では地球大気圏突入の直前にシャアが攻撃してくるシーンに使用。この攻撃で突入角度がずれてジオン軍の制圧地域に入ってしまう事になる。「序曲」と本曲はアルバム「交響詩ガンダム」でのアレンジがかなり活かされています。
ファースト「ガンダム」の音楽は映画版もほとんどが渡辺岳夫&松山祐士コンビによるものだが、「T」には助っ人で武市昌久(いちひさし名義でも有名)が参加している。大気圏突入の時に流れる曲とBGM「ガンダム空中戦」(アルバムタイトル「白熱戦」)の2曲は機械的なリズムが特徴。どちらも地球の重力を表現していて曲調が似ているので、「空中戦」を際立たせるため前者はカット。大気圏突入の曲はラスト近くのグフ戦にも再使用されているが、アルバムで繰り返し聴きたくなるようなものではない。一方「空中戦」は前半しか使われていないもののレコードでは後半の加速部分が格好良く、独立した「ガンダム」イメージテーマとして捉えてもいい傑作。個人的には「空中戦」を大気圏突入とグフ戦にも使ってほしかったのでこういう構成にしました。
ここで連邦側の補給部隊のマチルダ中尉(声/戸田恵子)が初登場。クールな美女に「あなたはエスパーかも知れない」とおだてられアムロは有頂天。フラウの嫉妬が可愛い。そのシーンに流れるBGM「マチルダさん」(アルバムタイトル「ときめき」)も新曲だが、ナベタケほのぼの系BGMは似たようなメロディーが多いので過去曲の変形バージョンにも思える。
シャアが味方(しかも友人)であるはずのガルマ・ザビを謀殺するくだりのBGMはサスペンス系ばかりなので全部カット。ガルマ戦死の件でジオン公国(サイド3)に集まるザビ家の場面に流れるBGM「ザビ家のテーマ」(アルバムタイトル「緊迫」)もサスペンス系ではあるが、イントロ部分にインパクトがある重要曲なので残した。「U」にも流用。
アムロが母親と再会するくだりも音楽的には地味なので全部カット。再び登場するマチルダのシーンに流れるBGM「マチルダへの憧れ」(アルバムタイトル「ぬくもり」)は、最初のアルバムでBGMのラストを飾った名曲「アムロの旅立ち」のリメイク版。マチルダと艦長ブライトの会話の中で初めて“ニュータイプ”という言葉が出てくる。フラウの嫉妬もこの1曲の中で2度も描かれる。
BGM「ギレン・ザビの演説」は、弟ガルマの死さえジオン国民の戦意高揚に利用する冷酷な長男ギレンのテレビ中継演説シーンに流れた新曲。後半のコーラス曲「エンディングT」は本編では少ししか使われていないがレコードではかなり長い。おそらく主題歌製作が間に合わないなどのトラブルに備えて主題歌なしでも終われるように作曲したのだろう。「T」がヒットしなければ「U」「V」製作は実現しない可能性もあったので、「これでおしまい」にも「次回へ続く」にも感じられるようになっている。
本編では最後に谷村新司作詞・作曲の主題歌「砂の十字架」(歌/やしきたかじん)が流れるところをあえて本編未使用のイメージソング「スターチルドレン」を選曲。「空中戦」以来ノリのいい曲がなくてイライラしている所にあの重い主題歌はありえない。三部作として考えた場合、富野監督自身の作詞の歌で統一したほうが気持ちいいし、実際この編集をしてみれば解る筈。谷村新司の起用は、映画「さらば宇宙戦艦ヤマト」で沢田研二が主題歌を歌ってヒットした事に影響を受けたのだろうが、なんか違うのよね。
「U」は全体的にメロディアスな曲が少ないので選曲も苦労しませんでした。BGM「ダイジェスト」はタイトル前に「T」でのガンダムの活躍を振り返るヒロイックな曲。続くBGM「戦場で」(アルバムタイトル「華麗なるを」)は本編では何度も繰り返し使用されていて、セイラの回想、ランバ・ラルの自決、マチルダの死、ハモン・ラルとリュウの相討ち、セイラとシャアの再会・・・その中でもマチルダの戦死をイメージした配置です。挿入歌「風にひとりで」も繰り返し使用されていますが、マチルダの死を悲しむアムロをイメージしました。
そして長い旅の果てにホワイトベースはジャブローに到着。BGM「ジャブロー基地」は美しい蝶の群れを表現したコーラスが印象的。しかしジャングル地下の要塞にシャアが潜入し大バトルが始まった。主題歌「哀戦士」はヒロイックな曲調なのでアルバム的にも盛り上がります。アムロは宿敵シャアを退け、ホワイトベースは正式にジオン軍を倒す作戦に参加する事になる。「エンディングU」はまたコーラス曲だが、途中に「ホワイトベースのテーマ」のイントロが入り、さらにシャアをイメージした新曲も挟まれる。今回は「V」へ続く前提で作曲されています。再び宇宙(そら)へ・・・。
曲番号を見れば判るとおり「V」は曲数が一番多い。逆に言うと良い曲が埋もれてしまっている印象もあり、それを浮かび上がらせるのが今回のベストの目的だった。まずは宇宙編らしいBGM「メインタイトル」で幕開け。そして、シャアの部下だったドレンが指揮する艦隊がホワイトベースと交戦開始。BGM「白い奴ガンダム」はニュータイプ・アムロの圧倒的な戦闘力を表現したアクション曲で、「ガンダム空中戦」に匹敵する完成度だ。しかしモビルスーツ戦においては天才的でも普段はただの少年で、BGM「父との再会」では中立空域サイド6の街で父親(ガンダム初戦で死んだと思っていた)を見つけたアムロがバス1区間分を走って追いかける。キミよ走れ♪
サイド6を離れる際に襲ってきたコンスコン隊を全滅させるガンダム。その場面に流れる曲(アルバムタイトル「我に力を」)は「白い奴」と意味合いは同じで印象的なのだが、編曲が久石譲(「U」で編曲に参加し、その未使用曲を「V」で使用した)なので「ナウシカ」BGMを思わせるし、映像がないと恐怖音楽にしか聴こえないのでカットした。よって、このベストで久石アレンジ曲は「戦場で」だけです。
BGM「ゲルググ出撃」は久し振りのシャア専用(=赤い)モビルスーツのテーマだが、短い・・・。ジャブローでのズゴック戦にはサスペンス曲が流れただけなので、短くてもこれは貴重。放置され荒れ果てたテキサスコロニーでガンダムと対戦するが、すでにシャアはニュータイプとしてアムロに追い抜かれているのでまたもや撤退。その途中でサイド7、ジャブロー以来3度目のセイラとの再会。BGM「シャアとセイラ」が流れる中、兄妹なのに敵軍として戦う事になったいきさつが語られる。このメロディーは「V」の中でバージョン違いが何度か出てくるので“セイラのテーマ”と言ってもいいかも知れない。
“ホワイトベースのおふくろさん”と呼ばれているミライ。ジャブローから新たにホワイトベースに乗り込んで来たワイルドな男スレッガー中尉。どちらもポスター(絵)にならないキャラだが、2人は「ガンダム」最高の名場面を生み出した。BGM「スレッガーとミライ」(アルバムタイトル「指輪」)は、心が通じ合った時が別れの時という哀しくもロマンチックなシーンを盛り上げた。スレッガーがビグ・ザムに突っ込んで死ぬ場面の音楽も入れるべきかどうか悩んだが、アルバム全体のバランスを考えてカットした。スレッガーのセリフ「悲しいけどこれ戦争なのよね」は作品のテーマそのもの。
アムロがサイド6で出逢った神秘的な少女ララァはアムロと同レベルのニュータイプだった。ジオン軍のララァ専用モビルアーマー“エルメス”が連邦軍を攻撃し始める。どこからか聴こえてくる「ラ・ラ」という女性の声は、テレビ版では効果音扱いだったが映画ではBGM扱いとなった。女性スキャット曲集「エルメスのララァ」の43と44はその声のみで、前者と後者の違いはよく判らないが繰り返し使用されている。45と46にはメロディーがあって、セイラの入浴シーンに流れた46を採用。47はほとんど印象に残らないが、スキャット曲集の締めとして選曲しました。
アムロとララァは戦いの中でニュータイプとして意識が重なり合い、憎しみも愛情も超えた不思議な空間(2人の世界)にトリップしてしまう。しかしララァを最初に見つけたのはシャア。2人の間に割って入るゲルググにガンダムがとどめをさす瞬間、シャアを愛するララァがその邪魔をした。“ララァのテーマ”とも言える挿入歌「ビギニング」はララァ登場、ララァ戦死、アムロのテレパシーによる仲間救助、エンドタイトルに使用され、アレンジBGMまで作られているので実質的には「V」主題歌である。
そしていよいよ最終決戦。連邦軍はジオン軍の宇宙要塞ア・バオア・クーに総攻撃を仕掛ける。シャアも未完成(もちろん赤く塗ってない)モビルスーツ“ジオング”で応戦。BGM「ジオング出撃」と「宇宙戦争」はシンセサイザーのアドリブ(?)演奏がSFっぽくてカッコイイ。主題歌「めぐりあい」はガンダム対ジオングの戦闘シーンに流され、ラストのアムロ脱出シーンにも使用された。井上大輔作曲の歌4曲はいずれも本編中で効果的に使われており、「T」から起用していれば統一感があったのに・・・と残念でならない。
「劇場版総音楽集」は「めぐりあい」で終わりだが、映画ではその後「ビギニング」が流れるのでその代わりとしてテレビ版挿入歌「いまはおやすみ」(作曲:渡辺岳夫/編曲:松山祐士)を配置してみた。セリフ入りバージョンはここに入れるのが正解だと思う。「V」の唯一の欠点は「いまはおやすみ」が使われなかった事で、それによってマチルダの存在が忘れられてしまった印象もあった。これぞ究極のメニューです。全部読んでくれてありがとう。