あたしももう38歳。
20代の頃は自分が親になるなんて想像もしてなかったな。
就職して、結婚して、息子が生まれて・・・
息子の名前はトオル。
小学5年生でとても活発。成績だって悪くない。
あたしになんでも話してくれるし、優しい子に育ったと思う。
ある日、トオルが友達に借りた映画を一緒に観ようと言ってきた。
ジブリアニメやピクサーのはよく一緒に観たけど、
トオルがあたしに見せたいと言うのは初めて。
ガンダム?
「ガンダム」というタイトルはよく聞くけど、
なんだかアニオタ向けっぽくてあたしはちゃんと見た事がない。
ロボットアニメなんて女性が見ても面白いのかな?
でも、トオルの目がキラキラしてるし付き合おうか。
何これ・・・ちゃんとしたSF戦争映画だ。
主人公のアムロくんとかシャアとか、キャラがすごく魅力的。
アムロくんのお母さんはよくいるタイプだけど、
子育てから逃げたくせに「すさんだねえ」はひどい。
アムロくんが怒るのもよく解る。
あたしだったら絶対一緒に宇宙に行ったと思う。
結局、数日かけて劇場版三部作を全部観てしまった。
ちょっと長いけどすごく面白い。
あたしはトオルとお友達に感謝した。
その後、トオルにせがまれて買った「ガンダム」サントラ盤は
あたしのほうが家事の間によく聴いてる。
ふと、昔インターネットで知り合った病弱な男性の事を思い出した。
そういえばあの人、よく「ガンダム」の話とかしてたな。
その時は何の事だか分からなくてスルーしてたんだ。
まだ、あのブログあるのかな?
検索で見つけ出したその人のブログは10年以上も更新されてない。
もう死んじゃってるのかも知れないな・・・。
あ、あたしの当時のコメントも残ってる。
「ガンダム」サントラベストのメニューという記事を見つけた。
うちにもある3枚組サントラ全曲集を編集するためのメニューだ。
今のあたしにはよく理解できるので早速パソコンで自作してみた。
たしかにすごく聴きやすい。
トオルが帰ってきたのでその編集ディスクを聴いてもらった。
「お母さん、僕もう同じ編集して聴いてるよ?」
なんと、息子も同じブログ記事を参考にしていたと言う。
「ガンダム」ファンの間ではかなり有名なブログらしい。
あたしは、そのブログに昔コメントしてたとトオルに話した。
「え? このクミって人、お母さんだったの?」
・・・なんだか不思議な縁でしょ(笑)
トオルの話によると、その人の遺したネット小説にクミが出てて、
すでにコミック化されてるんだって。
来年それが実写映画になると聞いてまた驚いた。
あたしの役・・・誰がやるんだろ?
(おわり)
【17日】
タイトルの「未来小説」もよく見たら「未来」→「来未」→「クミ」なので、意図してないのに意味がある事が多い作品になりました。モデルのくみサン自身が感じてくれたように、こういう38歳になれたら一番幸せだろうなと思う。僕にとっての幸せは、自分が書いてる記事やイラストがその場限りの消耗品で終わらない事なのでこういう話になった。作品は子供みたいなものですから、僕の子供がくみサンの子供と出会う話と言えるかも知れませんね。自分が病死している設定で小説を書くというのもどうかと思ったけど面白い試みでした。ネガティブから生まれるポジティブという感じです。
【20日】
以前、「ピンピン」小説のテーマは“ぬくもり感”という話をしていて、ある方に「だったらスーパーヒロインものじゃなく純粋にぬくもり感をテーマにした小説を書いてみろ」と言われたんです。それを意識した訳でもないんだけど、結果的にこの小説がそうなった気がします。マニアと一般のパイプ役になりたいという僕の願いも入ってますし、「ガンダム」という作品のあるある話にもなってる。サントラベストを実際に作らなければ生まれなかった小説ですね。
【29日】
これを書いた時点ではくみサンが読んでくれるか、コメントしてくれるかなんて予想もつかない訳です。結果的にすぐコメしてもらえて僕は独りよがりにならずに済んだ。だが、そうならない可能性だってあった。作品というものは恥をかく覚悟がなければ発表できない。イラストでも映画でも同じで反応があるとは限らないのです。片想いのラブレターみたいな感じ。出さなきゃ恥をかく事もないが、出せば喜んでもらえるかも知れない。ブログなんてものは自分の内面を他人に晒すんだから恥をかくのは当たり前。恥をかかないように演技してたら現実社会と同じになってしまう。それでは面白くもなんともない。