あけましておめでとうございます。
年末はアマゾンで「ポリス・ストーリー3」(超級警察)DVDのレビューを書いて、それをちょこちょこ直したりしてました。初公開NG集が付いたブルーレイも同時に出たのでDVDランキング自体はさほど伸びないでしょうが、DVDのほうに追加特典がない(ユニバーサル版の流用)と判るだけでも役に立つと思います。アマゾンレビューはアマゾンで直接買わない人の役にも立つし、今の僕の視力を考えると最後のボランティアになるかも知れない。ジャッキーやミッシェルには長年元気をもらってきたから、少しでも恩返しできたらいいなと。
美人アクションスター(というか香港カンフーアイドル)のミッシェル・キングを知ったのは「パノラマシティ」とかいう映画雑誌だった。本屋で立ち読みしたんだけど、真田広之と競演した「皇家戦士(こうかせんし)」が日本で公開されたのはそれからずいぶん後の事。ゲスト出演の「七福星」も「あぶない刑事」と同時上映でなんとか公開されたが、その1988年新春はコンビニでバイトしてて、そこでチケット買って劇場に行った。2回も観に行って、その後ビデオも買った。とにかく当時はミッシェルに夢中だったな。世間でさほど話題になってなくても僕はミッシェルが国際スターになる事を疑わなかった。
しかし、公開後に香港の映画雑誌「銀色世界」にミッシェルの結婚・引退記事が載ってショックを受けた。これからという時になんでだよ・・・と。日本での「皇家戦士」公開の遅れがなければあんなに早く引退する事もなかったかも知れない。結婚相手は「皇家戦士」プロデューサーのディクソン・プーン氏で、そもそも彼がD&B社を作ったのはミス・マレーシアのミッシェルを香港で映画女優として売り出すためだったのではないかと言われている。大金持ちにそこまでさせる魅力がミッシェルにあったんでしょうね。
そんな彼女が離婚して女優復帰すると知ったのは僕が東京に住んでいる時だった。ジャッキーとの本格的な共演ともなれば日本の映画誌から情報は入ってくる。「ポリス・ストーリー」シリーズは2作とも観ていたし、やや人気が落ちてきていたジャッキーにとってミッシェルは起爆剤になる。僕は「ポリスト3」日本公開を待ち切れずに香港版サントラCDを通販で買った。
ジャッキー香港映画は日本公開版で日本製音楽が使われていたのに、「サイクロンZ」「ミラクル」「プロジェクト・イーグル」辺りから香港製音楽そのままで公開されるようになっていた。だから「ポリスト3」の音楽も不安だったが、CDを聴いたらなかなかハイセンスで安心した。音楽はジョナサン・リー(李宗盛)という人で挿入歌も自ら歌っている。
が、劇場で本編を観て愕然とした。そのジョナサン・リーの音楽が半分くらいしか使われていない上にチョイスも最悪。ジャッキーとミッシェルの競演には満足したのに、音楽的にはやはり日本人の選曲・録音センスが必要だと感じた。前フリが長くなったけど、今回はジョナサン・リーのオリジナルサントラを画面に合わせて流す事で真の「ポリスト3」を知ってもらいたいと思う。いくつかBGM使用タイミングを書いていくので、まずはアルバム「超級警察」の曲目を見て下さい。
01 I'm Ready
02 謎(ジャッキー北京語版主題歌)
03 警戒
04 疑情
05 希望称曾董(ジャッキー北京語版挿入歌)
06 夜襲
07 危機乍現
08 暗潮洶湧
09 時空欄截
10 末路求生
11 突破重圍
12 我有我路向(ジャッキー広東語版主題歌「俺の人生」)
13 絶地反攻
14 歸
15 我只想称董(ジョナサン・リー広東語版挿入歌「希望」)
DVD(またはブルーレイ)は音声を消した状態で再生し、CDを流して確認して下さい。
アルバム構成から見ても、緊迫感のある01(本編未使用)がオープニングとして作曲された事は誰でも判るはず。ゴールデンウェイフィルムの表示の後、01を流すとピッタリはまる。実際に使われたBGMはちょっと安っぽいが、これはカッコイイ。
チェン・カクー刑事(ジャッキー)初登場のBGMもストレート過ぎて寒い。警部の「チェン刑事を呼べ」というセリフの後に04(本編未使用)を流してみてほしい。署内のシーン全体に流れが生まれる。
01のロングバージョンが09(本編未使用)だが、これがどこにはまるかを発見した事が一番嬉しかった。中国の格闘技コーチとチェン刑事が腕比べをするシーンだ。ヤン部長(ミッシェル)が「そうはいかないわ」と言った直後に09を流して下さい。ジャッキーアクションここにあり!という感じで格闘のテンションがまったく変わります。輪の器具(ラート)で転がるところも1曲の中でまとまり、さりげない笑いになる。本編のBGMはコミカルですよとアピールしすぎててダサい。
アルバムの中で最もインパクトがある11(本編未使用)はクライマックスのヘリコプタースタントのために作られた曲だと思う。ヤンに「私より奴らを追って!」と言われたチェンがヘリを見るところから11を流してみて。どうしてこの曲を使わないのか神経を疑うほど迫力が増す。ここまでの4曲はシーンと完全にシンクロするので、僕が勝手に騒いでるだけじゃないと判るはずです。
さて、ここからは本編で使用された曲を本来あるべき位置に戻してみたいと思う。作曲者の気持ちになりきれば出来ない事もない。07はチャイバの豪邸に到着する場面に使われたが、あそこは01を再使用すればいい。07は、ヤン部長との打ち合わせ後に写真を撮るシ−ンから流すとピッタリ合う。潜入作戦の難しさが強調され、コミカルさは抑えられる。
10はマレーシアでの追跡シーンに使われているが、それなら最初の追跡シーンにも使うべきだ。曲調から考えて収容所脱出シーンに合うだろうと推測した。ヤン部長が逃がし屋(マース)を射殺して「後は上手くやるのよ」的な表情を見せた後、チェンとパンサー(ユン・ワー)がトロッコに飛び乗るカットから10を流すとカンフーバトルや坂を登る場面がしっくり来るし、長さもOK。本編だと坂を登るBGMはいかにも古臭い曲調で、僕は違和感を感じていた。笑いを説明するような音楽はダメ。
06は中国の食堂、海上ボートチェイス、マレーシアでのチャイバ夫人奪還作戦に部分的に使用されているが、フルサイズで使える(つまりその画面に合わせて作曲したと思われる)のは奪還作戦のシーンだ。チェンがトラックのギアをニュートラルにしてタイヤが後ろに回り始めるカットから06を流すと、ヤンが護送車からオープンカーの上に落ちて道路に転がるところまでピッタリ合う。なお、食堂での乱闘〜ヤンのカンフーバトルには08(本編未使用)がはまるのでお試しあれ。
13はアルバム収録位置や曲調から考えてラストの列車アクションのために作られたと推測した。本編ではタイでの麻薬取引シーンの頭に使われているが、あそこには03がちょうどはまる。13をどのカットから流せば全てのアクションにシンクロするのか探すのに苦労したが、チャイバがヘリから落ちた後に部下Aが「高度を下げろ!」と部下B(パイロット)に叫ぶので、そこから流すとヘリ爆発までピッタリ合う。おだやかな曲調の14(本編未使用)はその後のシーンに流せるけど、長さが合わないのでここだという確証はない。
挿入歌の15(05も同じ曲)は、本編では中国の商店街に流れる劇中歌として使用されている。恋人メイ(マギー・チャン)の初登場シーンから流すと長さや雰囲気がいいのでメロオケかカラオケを流したいところです。会話が多いのでボーカルはちょっと邪魔な感じ。
結局、アルバム全曲の位置を割り出してしまいました。「これじゃイメージサントラじゃんかよ!」とずっと思ってたので、年末のDVD発売からの流れでサントラの謎を解き明かせて僕自身スッキリしました。ジャッキーファンの中には18年の間にCDを処分してしまった人もいるとは思いますが、この記事を読んで確認作業をした人だけが「ポリスト3」完全版を想い描く事ができる訳です。
おそらくジョナサン・リーの起用はスタンリー・トン監督の意向で、それを無駄にしたのはプロデューサーでもあるジャッキー本人でしょう。ジャッキー監督作「プロジェクト・イーグル」の音楽センスから考えれば想像がつく。僕は「ポリスト3」レビューで星5個を付けてますが、90点も100点も星5ですからね。「スパルタンX」だって日本版でも香港版でも星5を付けますが、熱心なファンにとってその差はメチャメチャ大きいのです。
【7日】
以前作った「ハード・ターゲット」サントラMDの残り時間に「ポリスト3」サントラを追加してみました。こうやって正しい曲順に並べて相応しいタイトルにしてみると、かなり充実した音楽設計であった事が解ります。「酔拳2」サントラと並ぶ名盤になるはずだった訳です。
01 メインタイトル
04 チェン刑事を呼べ
07 美しきヤン部長
09 スーパーコップ
10 パンサーと逃げろ
08 スタンガンに注意
03 チャイバの麻薬取引
06 チャイバ夫人奪還計画
11 ヘリコプター
13 バイクと列車
12 エンディング「俺の人生」
2012年は公開20周年になりミッシェルも50歳になるので、ジョナサン・リー版を「ポリス・ストーリー3/公開20周年記念特別編」として劇場公開するというアイデアはどうでしょうか? 頭に「ポリスト1」主題歌と「ポリスト2」主題歌に合わせた各ダイジェストを付けて。「2」主題歌は日本版では使われていないのでそれだけでも盛り上がると思うんです。で、「ポリスト3」サントラCDにボーナストラックとして「1」「2」主題歌を入れて再発売すると。僕自身は観られなくてもそういう夢を持っています。
【16日】
ジャッキーは世界でただ一人、戦いながら感情表現ができる俳優なんですよ。「ポリスト3」の腕比べファイトの場面が一番わかりやすい。あれはヤン部長のテストなので負ける訳にはいかない状況だが、対戦相手の武術コーチを倒してしまうと生徒たちの前で恥をかかせる事になる。なんとか実力を見せつつ引き分けにしなければいけない難しい戦いで、ジャッキーはおどけたり男前になったり実に細かく表情を変えている。格闘技術そのものはもっと凄い格闘家もいるだろうが、そういう人は必死の形相と無表情の2種類の顔しかできないのです。
【2月3日】
ジョナサン・リーのサントラが心地良いのは、おそらく日本の「あぶない刑事(デカ)」サントラを参考にしてるからだと思う。エンディング「俺の人生」はどことなく舘ひろし「冷たい太陽」「翼を拡げて」に似た感じのアレンジだし。あと、時期的にスタローン主演の刑事アクション「デッドフォール」(タンゴ&キャッシュ)のサントラも意識してるみたい。今より視力が良かった時には気付かなくて、ここまで視力が落ちた時に気付く事があるというのも不思議なものです。
「ポリスト3」は内容的には刑事物と言うよりスパイ物なので、ミッシェルが気に入った人は007シリーズ「トゥモロー・ネバー・ダイ」('97)を、ジャッキーが気に入った人にはジャッキー監督・主演によるスパイ・ストーリー「フー・アム・アイ?」('98)をそれぞれオススメします。スタンリー・トン監督によるポリスト番外編「レッド・ブロンクス」やポリスト第4作「ファイナル・プロジェクト」より面白いですよ。


「ポリスト3」(超級警察)をスパイ・ストーリー第1作と考えると「ファイナル・プロジェクト」(簡単任務・・・「ミッション・インポッシブル」の逆の意味)に続く「フー・アム・アイ?」(我是誰)は『スパイ・ストーリー3』になるのです。「フーアムアイ」BGMに「ポリスト1」主題歌のメロディーが時々混じるのはそういう意味だったのかと。「僕は誰だ?」の答えはチェン・カクーでした。「ファイナル〜」はポリスト完結編ぽくないし、「香港国際警察/NEW POLICE STORY」はチェン・カクーとは違うキャラだし、まさか「フーアムアイ」が実質『ポリス・ストーリー5』でチェン・カクー物語完結編だとはこれまで誰も気付かなかったと思う。僕もレビューとか書いてて初めて気付きました。