救急車の音が響く。
井川、シートベルトを何とか外し原の方に行く。
井川「ジプシー!!」
原の意識は無い。
頭から血が滲んでいる。
救急隊員が入る。
原のシートベルトを外し車椅子から降ろしタンカーに乗せる。
井川「原の容体は?」
救命士「頭の出血は大したこと無いようです。両腕を前で組み、指の負傷を防いだようです。首は頸椎捻挫に。あとは検査をしてみなければ何とも。爆発を起こさなくてよかったです」
井川、「爆発を起こさなくてよかった」という救命士の言葉が頭の中を駆け巡る。
爆発を起こしていたらジプシーは。
井川自身も動けなくなっていた。
〇街中
聞き込みを終え歩く西條。
男とすれ違う。
その瞬間腹部に痛みを感じる。
男の持っていたナイフが腹部に刺さる。
西條は男の手を握る。
男はナイフを抜こうとする。
西條は、ナイフを抜かれないように抵抗し男の手袋を脱がそうとする。
男の手から手袋が脱げ男は慌てて逃げて行く。
ナイフは西條の腹部に刺さったままである。
西條、携帯を出し救急車を呼ぶ。
西條「救急車!場所は・・・」
〇病院
〇同・原の病室
山下「原さん、気がつかれました?」
原「山下さん・・・」
山下「かなり酷い頸椎捻挫です。頭の傷は大したことは無いです」
原「トシさんは?」
山下「井川さんは足を・・・挟まっていた足を無理矢理に抜いて。別の病室に」
原「そうですか・・・」
山下「西條さんも・・・腹部を刺されて。手術は無事済み病室に」
原「・・・。西條の病室に連れて行って下さい!お願いします」
山下「寝てらした方が」
原「大丈夫です。俺の所為で・・。トシさんの病室に行ってから西條の・・・」
山下「原さんご自身も負傷されているんです。車が爆発していたら焼死していたんですよ!誰の所為だとかそんな言い方良くないと思います」
原「自分で動けない自分が情けない・・・形しか見えない・・・おとなしくしていればよかった・・・」
山下「・・・。車椅子に移します。首痛いですが・・・」
首に激し痛みが走る。
原、顔をしかめる。
原「大丈夫です」
山下「首、重傷なんですよ!骨が折れていたっておかしくない事故だったんです」
原「運だけは強いんだ・・・」
山下「原さん・・・」
原「この名刺の番号を携帯の短縮に入れてくれませんか?」
原、山下に名刺を見せる。
山下「?」
原「今日貰って名刺です」
山下「今日って・・・携帯いいんですか?触っても」
原「はい。お願いします。電話して礼言わないと・・・」
山下「礼って・・・。短縮何番に?」
原「短縮2に。1が西條です」
山下「3に私を・・・」
原「・・・。いいんですか?俺なんかに番号教えて?」
山下「全然構いません」
原「山下さん、いや祥愛さんの顔を早く見たい。見て、お礼をちゃんと言いたい。俺を怒ってくれるのは西條と祥愛さんだけですから。歩くことはたぶん、無理だと。西條が何処かの脊髄が損傷している可能性があるって。明日の再検査で分かるはず。眼だけはまだ可能性があります」
山下「美人でも無いおばさんの顔見たら幻滅してしまいます」
原「きっと、俺の想像している通りの人です」
山下「まあ・・・。井川さんの病室に向かいます」
山下祥愛は自分の胸がドキドキしていることに気かつく。
今まで患者に対してそんな感情を持ったことがなかった。
全く化粧っけのない自分を見たら・・・。
考えてもどうしようもないことが頭に浮かぶ。
井川の病室をノックする。
井川「はい」
山下「原さんをお連れしまた」
井川「ジプシー!すまなかった。もう少し運転技術が良かったらハンドルを取られることも無かったんだが・・・」
原「そんな、謝らないでください。俺の方こそ・・・」
井川「首の骨が折れなくて本当によかった」
原「頸椎捻挫です。これ以上負傷する個所なくなりました。ドックは刺されて・・・」
井川「捜査が進展して喜んでいるはずだ。自分が襲われたのは計算のうちだろう。ただ、ジプシーが襲われたのは想定外だったんじゃあないか?直接事件の捜査には関わっていないのだからな。ドックに顔を見せて安心させてやるといい」
原「安心するか・・・余計に心配を増やすだけに・・・首までこの状態ですからね」
井川「顔が見れればいいんだよ」
原「トシさん、足は大丈夫なんですか?」
井川「無理矢理抜いたようでな。少しややこしくはなっているようだが気に済んな。直ぐに良くなる」
原「・・・。ドックの病室に行ってきます」
井川「ドックにも俺のことは気にするなと言っておいてくれ」
西條と書かれてある病室。
山下がノックする。
西條「はい」
山下「原さんをお連れしました」
原の乗る車椅子を押し入る。
西條「ジプシー!大丈夫のか?」
原「それはこっちのセリフです。大丈夫なんですか?」
西條「出血もせずにナイフ抜かれないように頑張ったからな。おまけに犯人の手袋まで頂いた。捕まるのは時間の問題だ」
原「消されなければいいですか・・・」
西條「それはあるが・・・。寝てなくて大丈夫なのか?」
原「首も動かせず・・・これでもかってくらいに。段々気分も悪い。楊麗華の名刺です。電話してもいいですか?」
西條に名刺を渡す。
西條「気持ち悪いのか?電話なんかしてる場合か?」
原「やられっぱなしじゃあ面白くない。ちゃんと話ししないと」
山下「このゴミ箱いいですか?」
西條にゴミ箱を持ち上げ聞く。
西條「どうぞ」
山下「原さん、隅で・・・楽になります」
原「・・・。すみません」
車椅子を病室の隅に動かす。
西條「(名刺の目を通す)本物だな。何故?」
山下、原の背中をさする。
原、何度も嘔吐を繰り返す。

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