2009/4/27
絶望の赤き花 新作吟味
満開の桜に雪の降りてゐるあなたのゐない不可思議な春
絶望の赤き花咲く春の夜の河辺に誰ぞ人の気のする
明日もまた早出であるにかかはらずちびちびと呑む忘れ酒かな
あはなけりやあひたいとねがふわがままなみのほどしらずをたれぞしるらむ
もう一杯冷や酒呷る丑三つ時化けても出でな我が恋人よ
明朝は浅蜊汁なり数多なるいのちを地獄の釜で煮殺し
君からのメールが途絶へなすなくにただ呆然と一日の過ぐ
それなりに捨てられてゆくさみしさを楽しみながら独酌をする
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絶望の赤き花咲く春の夜の河辺に誰ぞ人の気のする
明日もまた早出であるにかかはらずちびちびと呑む忘れ酒かな
あはなけりやあひたいとねがふわがままなみのほどしらずをたれぞしるらむ
もう一杯冷や酒呷る丑三つ時化けても出でな我が恋人よ
明朝は浅蜊汁なり数多なるいのちを地獄の釜で煮殺し
君からのメールが途絶へなすなくにただ呆然と一日の過ぐ
それなりに捨てられてゆくさみしさを楽しみながら独酌をする

2009/4/20
何もできない 塔
総長に起立着席と指図する放送部女子の声の明るき
緞帳が降りきるまでの四十秒何もできないしてもいけない
テポドンが舞ひ上がる空見詰めてる県職員にできることとは
ミサイルが飛んでくるとふそのころに機上の我は歌を詠みたり
新宿の女いくどもかけなほし荒尾正伸に聴き惚れていく
あたたかな眼でわれを見る若き医師指の先にてデータのみ打つ
パソコンに一症例として打ち込まれ我が尊厳は平準化さる
大酒を呑みては騒ぎし翌朝のけだるさの中浅き夢見る
をさなごの人見知りするをかしさをからかひてまた抱き寄せてみる
年老いてあといくばくと思いきやあといくばくのまた長きこと
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緞帳が降りきるまでの四十秒何もできないしてもいけない
テポドンが舞ひ上がる空見詰めてる県職員にできることとは
ミサイルが飛んでくるとふそのころに機上の我は歌を詠みたり
新宿の女いくどもかけなほし荒尾正伸に聴き惚れていく
あたたかな眼でわれを見る若き医師指の先にてデータのみ打つ
パソコンに一症例として打ち込まれ我が尊厳は平準化さる
大酒を呑みては騒ぎし翌朝のけだるさの中浅き夢見る
をさなごの人見知りするをかしさをからかひてまた抱き寄せてみる
年老いてあといくばくと思いきやあといくばくのまた長きこと

2009/4/20
待つてゐる場所 北限
をさな子が数分のちの運命を知らずにはしゃぐ歯科待合室
早朝の耳鼻咽喉科玄関前寒さこらへてマスクが並ぶ
待つことに堪へられぬわがいらだちが待合室で浮きはじめをり
舌癌にて死にかけたとふ旧友が久しぶりねと声かけてくる
眼前の初老の男の年齢を推し量りつつ我が齢を思ふ
幾人か馴染みの顔を知り始め我が肉体の衰へを知る
あらかじめ死因は縊死となつてゐる彼は獄舎でまた春を待つ
銀行では番号札を引かされて金なきわれらただ待たされる
まだ馴れぬ非常勤講師控室見知らぬ同士が素知らぬふりで
常ならぬ旅となりたり死を待ちし人々の家通り過ぎし日
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早朝の耳鼻咽喉科玄関前寒さこらへてマスクが並ぶ
待つことに堪へられぬわがいらだちが待合室で浮きはじめをり
舌癌にて死にかけたとふ旧友が久しぶりねと声かけてくる
眼前の初老の男の年齢を推し量りつつ我が齢を思ふ
幾人か馴染みの顔を知り始め我が肉体の衰へを知る
あらかじめ死因は縊死となつてゐる彼は獄舎でまた春を待つ
銀行では番号札を引かされて金なきわれらただ待たされる
まだ馴れぬ非常勤講師控室見知らぬ同士が素知らぬふりで
常ならぬ旅となりたり死を待ちし人々の家通り過ぎし日
