申八歌壇俳壇例会情報
花冷えの嘘つきの日に報されし新元号のきもちのわるさ みんなのプロフィールSP

2009/4/20

待つてゐる場所  北限

をさな子が数分のちの運命を知らずにはしゃぐ歯科待合室

早朝の耳鼻咽喉科玄関前寒さこらへてマスクが並ぶ

待つことに堪へられぬわがいらだちが待合室で浮きはじめをり

舌癌にて死にかけたとふ旧友が久しぶりねと声かけてくる

眼前の初老の男の年齢を推し量りつつ我が齢を思ふ

幾人か馴染みの顔を知り始め我が肉体の衰へを知る

あらかじめ死因は縊死となつてゐる彼は獄舎でまた春を待つ

銀行では番号札を引かされて金なきわれらただ待たされる

まだ馴れぬ非常勤講師控室見知らぬ同士が素知らぬふりで

常ならぬ旅となりたり死を待ちし人々の家通り過ぎし日
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2009/2/13

駅にて  北限

先日、北限から連絡があり、今年の北限賞が私に決まったとのこと。

たぶん、以下の作品がそれに相当するのだろうと思う。


  駅にて

本日も七時二十三分発を待つ人がいつものやうにスポーツ紙を読む

眠さうな高校生の制服に染み込んでゐる煙草の臭ひ

プラットホームを占拠してゐた制服の無秩序な群れが整然と消ゆ

二日酔のサラリーマンの吐息には抜かれた毒気の臭ひも混じり

朝食を立ち喰ひ蕎麦で済ませをる男の棲みし家庭を思ふ

日溜まりに不幸を知らぬ母親が赤子あやして時を過ごせり

束の間の自分の時間が欲しくつて今日は各駅列車に乗りぬ

終電の迫りしホームで憎しみのこもる男女の諍ひのあり

此の駅でばつたり君と逢ふことを運命とみる ひとりよがりの

終列車過ぎ行きし駅のタクシーは浮き立つやうに客を乗せ行く
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2007/10/22

ストレス  北限

改革の波に乗らずに生きることさういうふうに生きられもせず

ただじつと予算の減るを待つだけの金にならない学問をせり

ストレスは馴れるものらしパソコンに向かひて今日も作戦を練る

闘ふといふ心持ちして会議待つ闘ふほどの大義もなきに

乗りかけた船だから乗るといふだけのあんたの軽い発想が厭

たいせつなことであらうに沈黙が続いてをりぬ暗き教授会

改革はリーダーシップとおだてられ掬はれさうな足元を見る

石の如く時の経つのを待ちてゐるかういう人らに足を引かれり

僕だつて辞めてやりたいこの仕事安倍晋三が恨めしくなる

着メロの猫の鳴き声忍び泣き会議室の隅など探す人あり

宰相が職場放棄のこの国で派遣社員が責任問はる

他人事のやうに他人の不始末を嗤ふ我が身の情けなさなり

壇上に立ちて頭を下げるだけ今日の仕事はそこまでの旅

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2006/12/25

主権者たち  北限

 『北限』の締切だ。とりあえず、10首つくった。今回は投稿したのがすべて北限賞の対象になるんだと。しかし、ギリギリまで忙しすぎた。教育基本法「改正」案がいとも簡単に国会を通過してしまった。戦後民主教育という幻想がガタガタと崩れていく。まさに歴史の転換点にいることを此の国の主権者たちは気づいているのだろうか。そして弱き主権者とその候補者は今日も黙黙と生きている。


国民の声はヤラセで聞いたふり詐欺のやうでも一歩進みき

減俸でヤラセの罪を償ふとふ男のけじめが泣かせるだらう

粛粛と教育基本法案通過せり国民はただボーッと見てゐる

戦争は出来るに越したことはないさういうふうに時は流れつ

年末の華やかな街年収は三百万の人で溢れる

かたくなにチラシを拒む人の群れ此の国を支へる人の群

間隙を抜けて防衛省に昇格す国民はまだ何も言はない

まだ馴れぬ所作で寝所をつくりゐるコンコースの端中年夫婦

報はれることはなくても此の国に殉ずるやうに子は育つべし

だんだんと住みにくくなる此の国を憂いてをりぬ我が愛国心
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2006/9/4

北限  北限

『北限』80号が出た。投稿して数日後に母は亡くなった。
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2006/7/22

母の最後の作品  北限

 せっかくの機会なので母の最後の作品を紹介しておきたい。病床でノートに書いたり、僕の耳元で詠んだりしたものを書き留めて投稿した。夏休みのことだ。パーキンソン病の薬の副作用で認知症的症状が出て、そのあげくに入院させた病床での作品だ。秋に療養型の病院に移り、最終的にそこで亡くなった。

  病舎にて
                   新谷美恵子

山なみを肩くみながらやってくる春の風なり札幌の夏

昼食の係の声が華やぎて新献立にわく月曜日

死ぬまでの儀式と思う病院の朝夕の食事みとられながら

我念力掻き寄せしごとく娘来る待ちに待ちたる面会日午後

待たざるに病院食の運ばれて親子二人の夕食となる

六月の空青ければ心ぬくし面会の妹まつも楽しも

白き空ペン字すらすら描きたし友への手紙父への手紙

病舎の窓にまだ読めるよと文字を書くガラス戸白し秋長けるかも

病廊を行き交いをする病人の笑声にぎやかに盆休み来る

思い出の母の貝爪われが受け爪切るごとに母を偲びぬ

窓際に蠅が一匹棲んでおり昨日も今日も三日目もまだ

見舞い来るる子の手の熱し点滴のわれに酷暑の辛くもあるか

血液検査わが血は赤く子別れの朝を染めをり入院ベッドに

歌ありて吾の老年ぼうたんの花のごと華やぐ病床にありて

青い光校舎を染めて遊ぶ子ら元気に見ゆる羨ましきかなや

               (『北限』75号 2005.11)
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2006/6/24

北限の締切  北限

 『北限』の締切だ。今回はちょっとつらい。あまり極私的なものは好きではないのだが、『北限』は母の入っている結社で、母に誘われて入った結社である。会の方々にも母の現況を知ってもらってもいいのかもしれないと思って、始めて母の病状を含めて投稿した。

死なぬやう食道を閉ぜしその日より母よ豊かに生きておはすか

物喰はぬ日が半年余続きをり母の好める苺は終はる

繰り返し家に帰ると訴へる母の眼差しそつと逸らせり

こんこんと眠れる母よ枕べにしばしの暇告げて帰りぬ

身体が弱りてゆける病ゆゑ微妙に母はうつろひてゆく

毎日が恙なくあるやと信じ日日の快楽に吾は逃げ込めり

九州にて北海道の母案ず歯痒きことはその距離にして

不安定な日もあるさあと電話では泰然として妹の言ふ

母がまた危うくなつたときの措置電話通して確認しあふ

母を看る受話器の向かうの妹にすまないなあと繰り返し言ふ

見舞ひには行けさうにないと呑み込みぬ忙しきこと言ひ訳にして

忙しきとは何だらう母よりも重き仕事はどれとどれかい

復活!と母の様子のメールあり予定はすべて順調であれ

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2005/12/25

北限  北限

   年の瀬

本日はネクタイを締め櫛を入れもののふのごと家を出でたり

交差点角コンビニ前の駐車場通勤者・車が近道をする

愛されるその裏返しで憎まれる人間の業に疲れてきたり

ゴトゴトと深夜特急走りける黙りこくつた酔客乗せて

恐いほどおとな顔した子が二人ストレスにつき語り合ふてる

寒き夜の空のてつぺんまんまるの月照つてゐる電球のごと

こつそりと探し物してるわれのこと咎むるやうに君は問ひかく

うしろ指さされてゐるを感じつつ身を隠すだけの旅に出でけり

まつしろの千歳空港見えてきた病床の母はいかにおはせる

長年の病が母の身を削り削りつくして年の瀬となり

我を見てまたくうくうと寝息立つ母の意識の今を知りたし

病院は真白き冬に包まれて母の世界はその中にあり

まつしろな空から雪が湧いてゐてずつと見てゐたかあさんの膝

※『北限』の締め切りであった。ふぅふぅぎりぎり札幌から投稿。
 昨日までの◎とかついていたのは投稿作品であった。
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