そもそも猪瀬前都知事が5000万円を徳洲会から借り入れていたことが辞職の原因になって都知事選があったわけだが、そのことをもう人々は忘れている。
猪瀬サンが贈収賄容疑で捕まると考えている人がいる。猪瀬サンが副知事時代、東電経営陣に信濃町の東電病院売却を迫ったことがあったからだ。
23区内に徳洲会病院を持ちたかったという徳洲会が、広い職務権限を持つ有力都知事候補者の猪瀬氏に、5000万円を提供したということなら、確かに贈収賄事件が成立しそうな気がする。
また、5000万円は選挙運動費用収支報告書に記載していない。もしこれを選挙のために使ったとすれば、公職選挙法違反が成り立つかもしれない。
かつての検察の特捜部なら、間違いなく「5000万円は生活資金としての借り入れだった」として公選法違反容疑を否認している猪瀬サンを逮捕し、贈収賄容疑の捜査を行ったかもしれない。
だが現在、捜査を指揮している山上秀明特捜部長は、佐藤栄佐久前福島県知事をダム建設に絡む贈収賄容疑で逮捕、取り調べた検事だった。
しかし、そのときのやり方は、今となっては「国策捜査」の典型とも言われ、自民党国会議員出身者であるにもかかわらず、知事就任後に原発に批判的になった佐藤前知事を陥れるためのシナリオありきの捜査であったことはよく知られている。つまり初めから「収賄」だというシナリオを描いたうえで、被疑者を拘束して、徹底的に締め上げて「自白」させるのである。
そのとき特捜部の描いたシナリオは、共犯逮捕の佐藤前知事の弟が経営する会社の土地売買を収賄の証拠と見立てた。ところが「贈賄側のゼネコン(西松建設)への売却価格は、市場価格からみて高額とはいえなかった。
最高裁で有罪が確定したとはいえ、収賄額はゼロ円の「利益なき収賄罪」という誠にヘンテコリンな判決を裁判所は出した。
最高裁と特捜検察の「癒着」ぶりが目に見えるような判決でなんとか検察は世間の目はごまかしたものの、少しでもモノを知っている人から見れば、検察への信頼はほぼゼロに等しい。
こうなると、たとえ猪瀬サンを逮捕しても、昔のような強引な捜査手法はもう取れないだろう。だからせいぜい、公選法違反で罰金刑にでもなれば、というところのような気がするけど。

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