厚生労働省の全国母子世帯等調査(2006年)によると、母子世帯の母親の年間就労収入は9割弱が300万円以下。100万円未満が31%で、100万円以上、200万円未満が39.1%。働いている母親の半数は、非正規雇用である。
児童扶養手当の給付総額は、05年で5279億円。1995年の1.5倍になった。
母子家庭への公的支援制度は、児童扶養手当のほかに、医療費助成、母子寮、公営住宅への優先入居などがある。
より高い収入が可能になるように、専門的な資格取得を支援する「高等技能訓練促進費」の制度がある。期間が2年以上の職業学校に通う母親向けの制度で、カリキュラムの最後の3分の1の期間(最大12か月)に、生活費や学費としてつき10万3000円が助成される。これによって看護師などの資格を取得する人も多い。
だが、最初の3分の2の機関をしのぐだけの資力がない人が多い。労働政策研究・研修機構が行った調査(07年12月〜08年1月)では、回答した1311人の母親のうち、学費を用意したり、実習に行ったりする時間がとれないので利用を断念したという回答をした人が多かったという。
自立支援教育訓練給付金は、働きながら職業技術を高めて資格取得を目指すために、指定された講座の受講費用の2割、最大10万円が助成される制度である。母子家庭にかかわらず、雇用保険により運営されてている教育訓練給付金制度で専門学校の講座を受講する人も多いが、この指定講座と母子家庭支援策の自立支援教育訓練給付制度は重なっている。
だが教育訓練給付制度を受けた人なら分かると思うが、これを受けた人で就職に実際に結びついた比率は少ない。母子家庭の母親対象のアンケートでは5割にとどまり、さらに常勤の職に就いた人となると、もっと少なくなる。教育訓練給付金の指定講座で取得できる資格や技能は、あまり高収入に結び付かないものが多いのだ。
そもそも失業率があまり深刻でないころに、雇用保険のお金が大幅黒字だったから始めた制度である。ところが失業率が高くなったら、指定講座が削られるなどして、制度を運営している人たちの熱意がもともと疑われる制度である。
また、高等技能訓練促進費の制度は、実施している自治体とそうでない自治体がある。実施割合は全国で63%にすぎない。そしてさらに、そんな制度があること自体を知らない母親も結構多い。アンケート調査には、事業の存在を知らなかったために、利用しなかったという回答が多かったそうである。
途上国の援助で、結局情報を得やすい地域に住む住民がいつも素早くモノを獲得し、情報弱者がいつも取り残されるという図式があったが、まさに同じことがこの国でも起こっているようだ。
(参照 日本経済新聞8月16日夕刊 生活面「母子家庭の支援 使い勝手に課題」)

0