1月9日、「武庫川ユニオン尼崎市役所分会支援闘争委員会」と尼崎市との交渉が行われた。市当局からの回答内容は、「市民課で09年4月より嘱託職員として雇用する。細部はユニオンと今後協議する」というものだった。
07年2月、住民票入力業務の偽装請負の告発から闘争が始まった。4月からは少なくとも派遣会社の随意契約で、そして秋の段階では4年間は派遣で随意契約として雇用はある程度安定するものと思われていた。しかし、08年2月に競争入札を実施するということになり、尼崎市の方針転換に組合員の怒りが爆発した。
3月3日から尼崎市役所に隣接する橘公園にテントを設置し無期限ストライキに入った。
尼崎市は3月21日に競争入札を強行実施した。落札業者はフルキャスト。フルキャストは日雇い派遣の大手で前年、二重派遣などの違法行為で業務停止命令を受けた会社だった。しかしフルキャストはユニオンの追及の中で契約を辞退した。
そして4月7日に再入札が行われた。2回目の入札に向け、ユニオンは争議中の事業所に派遣労働者を入れることは派遣法第24条違反の争議つぶしだと主張し、人材派遣協会や派遣会社に要請行動を展開した。派遣ユニオンや東京ユニオンも動き、2回目の入札の指名業者は13社、うち10社は事前に辞退した。
当日来た3社のうち、契約額を入札したのは1社だけ。しかも予定価格を上回り、結局、入札は不調となった。
4月11日に持った尼崎市との団体交渉で、臨時職員として4月14日から職場復帰することで合意に達した。その後ユニオンは、安定雇用を求めて闘い続けてきた。全国から闘争中、抗議FAXが届き、今年の秋には安定雇用を求める団体署名が行われた。
署名は1262団体となり、尼崎市側も「重く受け止める」と回答した。しかしユニオンの求める安定雇用の回答がなされず、自治労兵庫も全面的な支援を行い、100人規模の街頭宣伝活動や、市役所での早朝宣伝活動を積み上げた。
そして今日の交渉で前向きの回答がなされない場合は、再度全国の抗議FAX、市長室前での座り込み行動、市役所包囲行動など戦術配置をしていた。
世界は昨年9月以降の世界的経済恐慌で、全国各地で派遣切りの嵐が吹き荒れ始めている。労働者派遣法の問題が一気に吹き出した。尼崎市も経済界に非正規労働者の雇用の安定を要請する立場になった。世論の後押しもあって、白井市長には逆風が吹いた。
小西純一郎・武庫川ユニオン書記長は、尼崎市役所臨時職員の闘争は次のような課題を示したと述べた。
1)住民票や戸籍の入力業務まで委託や派遣労働者に任せてよいのか。
2)競争入札とりわけ派遣会社の競争入札は、賃金の安売り競争であり、現代版奴隷市場になっているのではないか。
3)リビング・ウェイジ(生活できる賃金)条例制定運動が必要ではないか。
4)完全自由化された労働者派遣法の改正が必要ではないか。
5)労働運動はこれから何をすべきかについての方向を示した。
行政に求められるものは、効率的な運営であるが、その前に行政の目標となるものは、市民が安心して働き暮らせる状況を作ることである。安上がりを求めるあまり、アウトソーシングの拡大をはかることは問題がある。
行政は、利益至上主義に陥りやすい市場経済に対し、社会のルールが守られるようにして、社会的責任を経営者に要請するべき立場にある。行政が自分の足元で、労働者を使い捨てにすることがあれば、民間に示しがつかない。
2月市議会で議員提案による公契約条例の審議が行われる。これによって、自治体で業務委託によって働く人々の最低限の基準を作ることに踏み込むことになるのかどうかが注目される。

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