60年の安保条約改定時に、核兵器搭載艦船の寄港などを日本政府が認めた「核持ち込み密約」について、村田良平元外務事務次官が前任次官から文書で「引き継ぎ」を受けていたと証言した。
だが、この秘密交渉プロセスは、すでにアメリカの公文書や日米の交渉当事者による証言でも明らかにされてきていた。今回、事務次官経験者が実名で「密約」の存在を認めた意味は大きいとしても、「まあ、そんなもんでしょう」という気持ちを抱いた人の方が多いのではないか。
村田元次官は、証言した理由について「(外務省を)辞めてもう十数年たち、冷戦も終わって時代が全く違う。だから、もういいだろうと判断した」と語っている。これに対して、政府は相変わらず、「核持ち込みの事前協議がない以上、核持ち込みはない」と否定している。
むしろ、そちらのほうが不思議なくらいだ。どうして、あくまでもウソとわかっていて、認めないのか。
そう思うと、村田氏がどうして今になってそれを認めたのか、ということも考えたくなる。毎日新聞で、これについて村田氏は、次のように語っている。
事務次官になる前から密約があるらしいということは、いろんな意味で耳に入っていた。密約に関する日本側の紙を見たのは事務次官になった時が初めてだ。確認もへったくれもない、ああそうだろうと思っただけ。
ライシャワー(元駐日米大使)が、「ずいぶん前にそういう約束がある」と言ったことが、アメリカの外交文書として公開された。日本の新聞が少し騒いだが、「ライシャワーがこんなことを言っている」という話が出ても、政府は必死になって「いや、そんな密約はない。ない」と言った。
アメリカが外交文書を公開して「密約があった」と言っているのに、日本政府は「そういう密約はない」と言っている。どっちかが言っていることがウソということだ。どちらがウソかといえば、日本側がウソをついていることは明らかだ。
密約についての引き継ぎの紙は、外務省で普通に使う事務用の紙だった。外務省で普通に使う紙に書いて、封筒に入っていて、前任者(柳谷謙介氏)から渡された。
「この内容は大臣に説明してくれよ」と言われて、それは(第3次中曽根内閣の)倉成(正・外相)さんと(竹下内閣の)宇野(宗佑)外務大臣には話した。
米国の外交文書の公開があって、日本政府がまだ否定しているが、なんでそんなウソを言い続けるのかなとぶぜんたる気持ちになった。どうせいつか、遅かれ早かれ明るみに出る話なのだから。
民主党の岡田幹事長は、民主党政権ができれば密約に関する文書もすべて公開すると話していた。村田氏が遅かれ早かれというのは、今度の総選挙で与党が敗れれば、この問題を含む外交上の密約の全ては明らかにされるにちがいないと考えてのことにちがいない。
問題はその後である。
外務省は、その当時の国会は反米、反安保勢力の勢力が一定の力を持っていたから、そのころはああするしかなかった、と社会党のせいにするに違いない。しかし民主党さんは違う・・・、ということに話を持っていく筋書きが見える。
おりしも、北朝鮮の核兵器問題が勃発している。北朝鮮に核がある。北朝鮮のミサイルは、アメリカ本土には届かないが、東京には打ち込める。それなのに、「アメリカ軍に日本に核兵器を搭載した船が入るときには、あらかじめハワイで核兵器は降ろしてこい」なんて言うんですか?と居直ろうという意図が見える。
そうなれば、民主党政権は「非核三原則」から「持ち込ませず」に例外を作って、2.5原則に改める決断を迫られるに違いない。それともまさか、アメリカの核の傘には頼れないから、日本も核武装すると宣言するのでしょうか?

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