昔の日本語学校の学生は、日本語を勉強に来るというよりはいかにも働いて金を少しでも儲けて、という人が多かったのですが、どうも最近は様子が違います。
中国では、大学の数が増えました。これまで職業専門学校だった学校が大学に「昇格」するなどしたのだそうです。10年くらい前、台湾でもそういうことがあったそうです。
そうなると、大学は出たけれど、それまでの通念上の「大卒にふさわしい仕事」が卒業生すべてに保障されるわけではないので、いわゆる就職難になります。
もはや経済的に余裕がない家庭の人なら、不満でも「非正規雇用」の仕事から始めるしかないでしょう。ですが、少し余裕がある家庭ならば、じゃあ日本の専門学校なり、大学を卒業すればまた何かチャンスがあるかもしれないという、はかない望みにかける人も出てきます。
また、親の目の光らない場所で「留学」ならぬ、「遊学」にいそしむ学生も増えてきます。
いずれにしろ、「金だ、仕事だ」という雰囲気ギラギラの学生はめったにお目にかからなくなりました。まあ、これが豊かになったということなのでしょうか。
ところで、7月8日に個人観光ビザで入国する中国人観光客18人が成田空港に到着したという報道がありました。7人の家族連れや、会社員、大学職員、夏休みに入った子どもや女性の一人旅などさまざまだったそうです。
08年10月に観光庁が発足しましたが、その時から中国の個人観光ビザをいつ解禁するかが問題になっていたようです。これまで、中国からの観光客は団体ツアーに限られていましたし、実際のツアーを行う観光会社は、時間管理を厳格に行い、自由行動中に一人でも行方不明者がでないか神経をとがらせていたと聞きます。
つまり、観光ビザで入国中に「失踪」して、不法滞在しようという人がいないかどうかという当局の意向を受けて、観光会社は神経をとがらせていました。
中国人というお客はありがたいのですが、入国管理局と、時間管理が厳しすぎるとクレームをつける顧客(中国人観光客)の板挟みになっていたということです。
実際、買い物のための自由行動の時間が数時間では、どの店が良いのかを比べる余裕もないので、日本に来る最大の楽しみである買い物に、大いに不満が残るのがこれまでの団体旅行客でした。
今回、団体旅行が解禁になったということは、中国人の中でも特に経済力があると認定された人に限られて選考をおこなったということで、この人物ならば日本での「失踪」懸念がほぼ払拭できると当局が踏んだということでしょう。
ビザ発給は、北京、上海、広州の在外公館が管轄する地域在住の個人がその対象となるそうです。 個人ビザといっても、発給は「世帯」を対象に行われるようです。
実際の選考は、代理申請資格を得た中国の旅行社が、年収や犯罪歴の有無などを調べ、「失踪の恐れのない、十分な経済力のある中国人」であるとされた旅行希望者を、さらに在外公館が検討し、身元調査書を見た上でビザを発給するというものだそうです。
なんだか、日本語学校の学生選考手続きみたいですね。
年収25万元(1元=約14円)以上という目安があるものの、実際これに満たない場合でも保有資産や社会的地位などから総合的に判断するとのことです。
ちなみに、法務省の言う「失踪」は、「不法滞在」者とは異なるそうです。つまり、不法滞在するつもりはないが、ついうっかり、あるいはやむを得ぬ理由からスケジュール通りに帰国しないなどの場合も「失踪」として統計上カウントされるということです。
この個人ビザ解禁の第1陣では43人が来日しました。
2000年に団体ビザを解禁したときは、4ヵ月で1000人超が訪日しました。1ヵ月に換算すると250人で、今回は1週間でこの数字に相当する申請があったそうです。(観光庁長官・本保芳明による)
今回の43人の内訳は、成田空港39人、関西空港3人、新千歳空港1人ということです。
中国で年収300万以上の人々ですか。そりゃかなり豊かな人たちですね。
そういえば、昔日本も旅行するなら団体旅行なんて格好悪い、格好いいのは「一人旅」という時代がありましたね。ありゃ、「留学じゃないよ、遊学だ」なんていうことで、海外留学の価値が下がった時代もありましたなあ。

0