民主党の小沢さんは、衆院選のマニフェストで一度は明記した日米の自由貿易協定(FTA)を巡って、7日に「締結する」から「交渉を促進する」と党本部が修正する方針を表明したことに対して、8日に鹿児島県肝付町で記者団に、「農家には戸別所得補償制度の導入を提案しており、食料自給体制の確立と自由貿易は何も矛盾しない」と述べたそうである。(日本経済新聞9日付)
小沢さんは、もともと農産物自由化は推進しつつ、農業や漁業の生産コストと販売価格の差額を補填する「戸別所得補償制度」をセットとして考えていた。
これで本当に貿易自由化を進めても、農家の経営が成り立つようにできるのか、私はなんとも分からないが、そういう私の疑問に答えてくれる方向ではメディア上での議論は進まなかった。
メディアはもっぱらこれを、07年の参議院選挙を勝ち抜くための民主党の作戦として捉えてのみ報道していた。民主党自身も、戸別所得補償のみをアピールして、FTAの方は少なくともセットとして言及はしなかった。
まあ、それは政党の戦略・戦術の話だからあり得ることである。
ただ、大手新聞をはじめとするメディアの側も、民主党のこの政策を「バラマキ」だと批判することはしても、果たして本当に戸別所得補償をすれば、食料自給体制と自由貿易が矛盾なく併存できるのかどうかを詳しくは分析しなかった。
これでは、民主党の打ち出した政策が本当に効果があるのかどうかを検証したとは言えないし、批判したことにもならない。
だいたい、「バラマキ」だといえばそれで批判したことになるというのも安易な考え方である。
その政府が支出したお金がどれだけ効果があったのか、あるいはそれをすればどれだけ効果があるのかを考えて、効果があるのかないのかという分析や予測を示さなければ意味がない。
この日経の記事も、「小沢氏は「農協が一方的にわいわい言っているケースもあるようだ。ためにする議論でしかない」と意に介さないが、党内外で火種になる可能性もある」と言うだけで、ついに私の疑問に答えてくれないままに、選挙戦のどさくさに突入しようとしている。
いったいマスメディアは、この間の参議院選挙から今まで何をしてきたのであろうか?

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