オバマ大統領の来日が一日遅れて、滞在期間も短縮されましたが、その原因はアメリカの陸軍内部で起きた銃乱射事件の追悼式に出席するため、とのことです。
しかし、この事件、改めてアメリカ社会の抱える問題の深刻さを表しています。
フォート・フード米陸軍基地は、テキサス州オースティンの北にあり、5万人の兵士が配備されている米国内最大の基地です。この基地で、イラクへの派兵を予定されていた軍医であるアメリカ兵士が同僚の兵士を銃撃して多数の死傷者が出るという惨事が起こりました。
「反戦イラク帰還兵の会」(IVAW)は、全ての兵士を帰国させよう、と訴えている団体で、アンダー・ザ・フード・カフェを開いてこの基地の目の前の場で戦争に反対する兵士が集まる場を作ってきました。
IVAWによれば、フォート・フード基地の銃撃者のニダル・マリク・ハッサンは人種差別の犠牲者だった、ということである。
ニダル・マリク・ハッサン少佐は、ヨルダンからアメリカに移民してきた両親の下でバージニア州に生まれ、高校卒業後すぐに陸軍に入隊しました。陸軍は、その代わりに彼が大学と医学校に行く費用を支払いました。
ハッサンの叔母によると、彼は長年除隊の機会を探すようになりました。自分の信仰するイスラム教についての嫌がらせを受けていたということです。
ハッサンのいとこでバージニア州の弁護士のナーデル・ハッサンは、ニダル・ハッサンがアフガニスタンやイラクから帰還した兵士の話を聞いていたといいます。
いとこのナーデル・ハッサンも、ニダル・ハッサンが中東出身者であることによって陸軍の同僚から嫌がらせを受けていた、と語っていました。
IVAWの声明によれば、「こうした銃撃事件は、突然の大事件として起こっているのではない」といいます。
すなわち、8年間の無意味な戦争が、アメリカ軍兵士とその家族に莫大な打撃を与えています。
陸軍は、PTSDや他の精神面の健康問題から完全に回復する手助けをするよりも、兵士を「配備できるようにする」ことにより大きな関心を持ってきたため、兵士はドラッグやアルコールによる自己治療以外にほとんど選択肢がないようになっています。
自殺したり、殺人を犯したりするおそれが高い兵士が、陸軍によって配備される、そんなのは日常茶飯事だといいます。
IVWAは、政府も陸軍も「今こそ兵士をもっと真剣に守るという義務を果たすように希望する」としている。
アンダー・ザ・フード・カフェは、軍務についているメンバーに法律的、財政的、医学的な照会の支援を提供する活動をし、戦争と軍隊に関する自分の考えを兵士が自由に表明できる空間を作ることを目指しています。(
http://www.underthehoodcafe.org/)
冷戦下では、少なくとも先進国と言われた国々では、戦争というものは「海の向こう」の出来事でした。しかし、途上国の貧困が先進国にも押し寄せるように、戦争もしだいに先進国へ忍び足で押し寄せてくるようです。

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