昨日、日本学術会議のシンポジウム「日本のジェンダー平等の達成と課題を総点検する」に参加しました。
4時間にもわたる催しでしたが、聞いていて全く疲れを感じることなく、むしろ頭の中が整理される思いがしました。
これは、国連女性差別撤廃条約に基づいて、条約締結国が定期的に提出する報告書に対して国連女子差別撤廃委員会が出した各国政府への最終見解が出たことをめぐり、開催されたものです。
今回の日本政府への最終見解は、2008年に提出した第6回報告書の検討結果だそうです。(最終見解全文は
http://www.gender.go.jp/teppai/6th/CEDAW6_co_j.pdf)
その内容は要約すると「少子化・男女共同参画担当大臣の任命や第二次基本計画の策定、妊産婦死亡率の継続的な低下等に対して肯定的評価はあったが、全体的に前回(2003年)の勧告内容(民法における差別規定、労働市場における賃金差別等)への取組が不十分であり、条約のすべての規定を計画的・継続的に実施することが締約国の義務であると、政府の遂行責任を厳しく追及する内容となった」ということのようです。
今回のシンポジウムでも時節柄、話題に多く上ったのは選択的夫婦別姓などの民法改正問題と、雇用問題でした。
雇用問題に関する勧告内容は、要約すると、「妊娠・出産による違法解雇の防止、垂直的・水平的職務分離を撤廃し賃金格差を是正。官民双方に女性差別に対する制裁措置を設けることを奨励」ということです。
近年、正規雇用と非正規雇用の格差が大きな問題として社会全体で取り上げられるようになりましたが、そもそも派遣労働の規制緩和が行われた発端は、「男性に扶養される女性」を社会保険や雇用保険の負担なしに活用しようというところにあったわけです。
ところがそもそも男性に扶養される女性が家計補助として働く働き方が、単身者、母子家庭、そして男性にも広く広まり、それを主たる収入とする人々が増加したというのが事態になりました。そこにワーキングプア問題が顕在化する原因がありました。
また、パート労働法改正でパート差別の禁止も導入はされましたが、正社員と同等の短時間労働者にその規定が限定された結果、対象となる労働者が極めて少ないものになったりして、女性の非正規雇用化が進み、男女賃金格差は開きました。
さらに正社員には長時間労働が強いられ、いくら男女雇用機会均等法があっても、会社が長時間残業や好きな時に好きな場所で働かせられる「妻つき男性」モデル(竹信三枝子・朝日新聞編集委員の命名?)に合わない女性は、職場で賃金上昇する地位に就くことはできず、能力を伸ばせる機会も与えられず、非正規雇用を「自発的に」選択する方向に誘導させられることになります。
不況時にワークシェアリングが導入しようとすれば、非正規雇用労働者の賃金を上げるために正規雇用者の賃金を下げることにつながるという問題は、かなりマスコミでも取り上げられました。
しかし、「妻つき男性モデル」の正規雇用男性労働者の年功賃金には、家族手当などの「生活保障給」がかつての日本の大企業では組み込まれていましたから、これがまた男女差別、あるいは正規・非正規の隔たりを大きくし、男性正社員の「社畜」化を推進しているともいえます。
シンポジウムの最後あたりで、参加者のなかの数少ない男性の50代後半・上場企業勤労者の型の意見として、給与の「生活保障給」部分を公的な生活保障手当に置き換えることで、男性にも女性にも働きやすく最低生活保障がされた労働環境を実現すべきだという見解が示されました。傾聴に値する考え方でしょう。

0