14日夜、本郷の東京大学で昨年夏に、上野千鶴子さんと辻元清美さんの共著で出版された『世代間連帯』(岩波新書)の出版記念シンポジウムが行われた。
パネラーは著者の二人に加えて姜尚中さん、湯浅誠さんが加わる。
新聞の首相動向欄にも書いてあるとおり、姜尚中さんは数日前、鳩山さんと二時間ぐらい話し合った。基本的には、6月に東大が行う日韓関係の会合に出席を要請するのが目的だったとのことだが、当然ながら首相に意見を述べたようである。
すなわち、首相は4年の任期を全うすべきであると姜さんは語ったらしい。
そりゃそうでしょう。今、首相が直面している問題は、別の人に総理大臣が交代してもなかなか困難な問題ばかりである。どうやっても批判、批難、誹謗中傷避けられないだろう。
しかしながら、戦後初めて本格的に政権交代して選ばれた首相が、任された4年の任期を全うしないで投げ出しちゃって、安倍政権のようになったら、むしろそのことの弊害の方が大きい。
姜尚中さんの激励を得たせいか、この数日、ハトヤマさんは前のように目が泳がなくなったとか。
でもハトヤマさんの頭はパソコンのワープロソフトみたいで、新しく入力すると、どんどん上書きされていくと一部では言われている。だから、いろんな「ブレーン」と称する人が入れ替わり立ち替わり意見を具申すると、最近会った人の意見に影響されやすい、とか誰かが言っていた。だから急に「海兵隊は抑止力」だなんて言い出すのか?
韓国で金大中、盧武鉉の政権が続いたとき、テレビメディアはどちらかと言えば政権与党に親和的で、新聞三大紙は政権に批判的というより、むしろ誹謗中傷すら多かったと聞く。
テレビ関係の組織のトップに、軍事政権下で反体制・市民活動をしていた知識人が抜擢されたことが大きかったようだ。
それに比べると、鳩山政権の政権とメディアの関係は、自民党政権に批判的だったとされる朝日新聞なんぞも、やはり55年体制のアタマから抜け出ていないのかなあという報道が目につく。
そもそも盧武鉉さん自身が市民派弁護士だったのだが、金大中政権を生んだ政権交代によって政権と「市民社会」の距離が近くなった韓国に比べると、日本はまだ中途半端ということかもしれない。
しかしながらそれは、日本の市民運動なるものの層の薄さを示している。
湯浅誠さんが言うように、かつて障害者の運動は様々なイデオロギーや党派的な対立に満ちていた。しかし、かつての政権が障害者自立支援法という「失政」をしてくれたおかげもあって、障害者自立支援法反対の一点で障害者当事者の声を聞けという運動としてまとまった。
その他の市民運動は、中に入ると「あのグループとは意見が合わない」とか「あいつとは話したくない」みたいな話が多い。外から見たらほとんど同じ人たちが足を引っ張り合うことも多い。
うっかり「政権」なんぞに近づくと、「あいつは取り込まれた」なんていう話になったものである。
それはともかく、もし鳩山政権が安倍、福田、麻生と1年で終わった政権が民主党政権でも続くということで、それによって政党政治が見放され、誰を選んでも同じというシニシズムが人々に広がり、いよいよ大政翼賛会的「大連立政権」の誕生につながるだろう。
そして大連立になっても、日本の直面する「難問」にすっきりした答えはでない。そうなれなれば、大連立の次の選択肢はなくなるのである。
旧自民党政権が残した高度成長からバブルにいたる時代の遺物やらお荷物は、半年やそこいらでは片付かない。有権者は、政権を大いに批判しながら監視しつつ、なおかつがまん強く政権と付き合う覚悟が必要ということである。
自民党政権下の過去の時代を徹底的に反省して、一からやり直す面倒な作業をおっぽり出して新党に走った政治家よりは、まだ「鳩山・一郎」政権のほうがましのようである。

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