イラク戦争において、アメリカのブッシュ政権の「ポチ」となって参戦したイギリスは、よほどアメリカに逆らえない何かがあるのかと、思わせた。
そのときのブレア首相の判断の誤りが、どのようなものだったかについて、独立調査委員会が作られ、元首相もそこに呼び出されたという話である。
その鉄の同盟であるはずの米英関係に思わぬ亀裂が入っている。
アメリカ南部ルイジアナ州沖のメキシコ湾で起きた流出事故はいまだに解決の目途もたたない。このままでは史上最悪の環境破壊ということになる。
油田に権益を持つ英国系石油会社のBPは、米国内で配当を止めて被害地域への補償を優先させるべきだという世論の高まりに苦慮している。
複数のアメリカの国会議員も、BPに配当を中止するようにと書簡を送った。
オバマ大統領も、この問題が政権の命取りになりかねないという懸念を強めており、4日にルイジアナ州を訪れたとき、BPに対して配当よりも事故で損害を被っている漁業関係者に優先して補償するように促した。
アメリカ政府は、原油流出による被害の補償や対策費用は、全面的にBPが支払うべきだと主張している。金融危機後に大手金融機関を公的資金で救済したときに浴びた批判があるので、なおさらBPに対する風当たりは強くなる。
だが、BPの経営が行き詰まれば、イギリスにとって打撃が大きい。
「BPは英国の株式時価総額上位5社の1社で、昨年は年間105億ドルの配当を支払った。英メディアによるとBPの配当額は英国の上場企業の全配当金の1割に当たり、年金基金などが『運用が悪化する』との懸念を強めている。」(日経 6月12日)
キャメロン首相は、「英政府はBPを支援する用意がある」と発言し、直接にオバマ大統領と電話会談することも検討している。
「英首相は英国経済におけるBPの影響の大きさなどを説明し、改めて理解を求めるとみられる。」(日経 前掲記事)
しかしながら、米国内でBPに対する批判は収まらない。「なかなか被害を食い止められないことに加え、陣頭指揮をとるヘイワード最高経営責任者が『ふつうの生活に戻りたい』ともらしたことに批判が集中。オバマ大統領がテレビで、自分の部下ならクビにすると発言。米国内では『対策が優先』と、裁判をしてでも配当を止めようという動きがある。」(朝日新聞12日)
英国でもBBCが反英感情の高まりを懸念する英国産業界の見方を紹介した。英国の投資顧問会社のアナリストは、アメリカの政権が強硬姿勢をとっても、清掃作業にも、株主にもプラスにならないし、石油権益はBPにあるが、開発には米国企業も絡んでいると、八つ当たり的発言も飛び出した。
「ポチ」も追いつめられると噛みつくことがあるということ・・・。それにしても、石油だの原子力発電だの、ワレワレの生活は実に危うい基盤の上に成り立っているということがよく分かる。
この石油流出事故は環境問題だけじゃなくて、年金問題でもあったという点が考えさせられる。

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