「あなたがたの中に、魚を欲しがる子供に、魚の代わりに蛇を与える父親がいるだろうか。また、卵を欲しがるのにさそりを与える父親がいるだろうか。このように、あなたがたは悪い者でありながらも、自分の子供には良いものを与えることを知っている。まして天の父は求める者に聖霊を与えてくださる。」(ルカによる福音書11−11〜13)
米軍基地がなくなった方が、経済効果が高いと沖縄の人は思い始めた。
別に鳩山さんがついうっかり、「最低でも県外」と言ってしまった辺野古への新基地建設に反対が多数になったのではない。
沖縄の県議会も全会一致で、「基地反対」となったのは、まさに大部分の県民の意思を表している。
それは米軍跡地の開発が成功したことによって、基地撤退後の不安が薄らいだからである。
例えば、那覇市北部にある那覇新都心は、かつて米軍の牧港住宅地区として使用されていたが87年に全面返還された。
その後、長く開発が進まなかったが、21世紀に入り、県内の有力企業や行政機関、日銀の那覇支店などが移転して、一大都市になった。
北谷町美浜地区にあるアメリカンビレッジは、もともと米軍ハンビー飛行場跡地だった。返還後、若者や米軍関係者が集まる商業地区となり、今では人気スポットになった。
返還された基地の跡地が繁栄していることを知っているのは、沖縄県民である。基地がなければ経済的に自立できない、東京の補助金がなければ沖縄経済は立ち行かないと考えているのは、本土の人間たちだけである。
野村総合研究所をはじめとするシンクタンクが、県から受託した調査によれば、「那覇新都心では、財やサービスの需要が、基地返還前に比べて約16倍に跳ね上がったという。今後の跡地も、中長期的に見れば『財政収入が支出を上回る状況がもたらされることが明らかになった』と指摘する。」(日経ビジネス6月14日「基地経済からの離陸 普天間問題「怒り」の真実」
だが、新基地を受け入れる見返りに「地元振興策」を与えるような従来の開発計画を続けていけば、高い経済効果は起きない。現在ある地域社会が抜け殻になり、荒廃が進む。しかし、基地と言う足枷を外せば、全く新しい経済効果が生まれることを、沖縄県民は感じている。
民主党政権の政治家たちに、父親の愛情を持てとは言わない。だが、沖縄県民は民主党政権に大きな期待をした。せめて、魚を蛇に、卵をさそりに見間違えないと自信を持って言えるかどうか、胸に手を当てて考えてみるべきだろう。

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