民主党の岡田幹事長は、22日に、日本記者クラブで「民主党政権の課題と展望」と題して約1時間の講演・質疑を行ったが、「残念ながら、私が話した内容についてはほとんど報道されず、その後の質問で集中した、小沢元代表の国会招致の問題ばかりが報道されました」と不満を述べている。
確かに、1時間の講演・質疑の内容から見ると、ほんの一部(小沢問題?)だけが報道されているようである。
要するに、民主党政権15カ月の「成果」があまり語られることはなく、「ダメだ、ダメだ」という報道ばかりが先走りをしているとのこと。
まあ確かに、マスコミの特に政治記者は政策について興味がないというきらいはあるんでしょう。
では、「成果」は何なのか?彼のメールマガジンからその話の内容をピックアップすると・・・。
「例えば、政治主導に関して言えば、事務次官会議を廃止し、閣議などで閣僚を中心に議論をしながら物事を決める仕組みが見えてきました。いままでは、事務次官会議で合意したことだけが閣議に上がるため、政治家同士が議論をする場が非常に限られていたことから考えると、これは大きな変化です。」
それは確かにそうだが、ただ、省庁によっては、大臣ご自身が政策に通じていないせいか、官僚に対する指示が適切でなくて混乱をきたしたり、副大臣・政務官が役所の課長あたりが知っていればいいことに拘泥して、役所内のやる気を削いだきらいがなきにしもあらずになったりしたとも聞いています。
「事務次官会議がなくなることを想定していた人は、永田町にも霞が関にもほとんどいなかったと思います」ということですが、それだけ政治家たる大臣の力量が問われるということですが、それに応えられなかった大臣がいたことも事実でしょう。
「あるいは、政治主導という意味では、記者会見のオープン化も、私が外務大臣のときに進めたことを皮切りに、かなり進展してきました」ということですが、これも大臣によってオープン化に極めて消極的な省庁があったと聞いています。
「経済・財政面では、例えば予算の再配分という意味で、公共事業予算を2010年度本予算で18%削減しました(11年度はさらに5%削減)。これなども、いままで考えられないことが起きたわけです。」
まあ、「いままでに考えられなかった」とはちょっと言い過ぎの気がしますけど。なぜなら、小泉政権への自民党内の不満は、公共事業を減らしたからでしょう。すでに自民党政権時代から、公共事業は削減されてきていました。
問題は、それは「どんな公共事業か?」なんでしょう。
「6月の新成長戦略の策定や、財政運営戦略の策定といったこともきちんと行い、日本を成長させていくなかで、財政の規律を取り戻していくという大筋について、6月の時点で政府としての方針を固めて明確にしたことも、あまり触れられることはありません。」
成長戦略がないと言われて、あわてて成長戦略を考えたというマスコミ報道はウソなんでしょうか?その辺はどうもよくわかりません。
「子育て・教育の面では、子ども手当の創設については、いろいろな議論がありますが、子育てを社会全体で行うという意味で、非常に画期的な政策の大転換でした。そして、高校授業料の無償化や母子加算(一人親世帯に対する生活保護の加算)の復活、父子家庭に対する児童扶養手当の創設など、本当に厳しい状況にある方々に対して、しっかりと手当をするという考え方が実現しました。」
いろいろな議論がある中で、あえて実現するのはいいが、なぜ「子供手当」なのかについての説明や理論づけが、民主党内で発言する人によってバラバラな印象が拭えないせいで、あたかもこれが「ばらまき」であるという批判に答えきれていないのが問題でしょう。
「医療・雇用の面でも、10年ぶりに診療報酬を増やして、救急医療や産科、小児科や勤務医に厚く配分することにしました。こういったことがなされないために、救急医療や産科、小児科の医師が不足することが起きていました。その解消に向けて、大きな一歩を踏み出したともいえます。」
まあこれも、解消にむけての「一歩」に過ぎないという気がします。「大きな一歩」かどうかはまだ評価するのは早い?
「求職者支援制度ですが、2010年度は暫定的に、来年度からは恒久化されますが、失業保険の適用のない方、特に自営業や失業給付が切れてしまった方々に対して、職業訓練を受けることを前提に、月額10万円の手当を行います。これは、トランポリン型といいますが、セーフティネットで単に網を張るだけではなく、また元に戻れる(就職し、自活できる)ようにトランポリンを下に置いておく。ネットではなく、トランポリンで元に戻ってもらうことです。職業に復帰してもらうための非常に大きな画期的な一歩だと思います。こういうことも、あまり触れられることはありません。」
確かにこれは大きな政策変化であると評価はできますが、一方で「事業仕訳け」で職業訓練関係の事業が仕訳け対象になったりすると「?」という気持ちが残ります。
これらの政策理念には賛同するという人の中には、スエーデンを初めとする北欧諸国の職業訓練政策の充実を知っている人が多いだけに、どうしても点が辛くなる人が多いということでしょう。
逆に「小さな政府」論者からすれば、職業訓練に予算を増額すること自体に反対する人も多いわけですから・・・。
「そして、税金のムダ遣い根絶という意味では、行政刷新会議の設置や事業仕分けなど、言うまでもないことです。」
藤井前財務大臣によれば、事業仕訳けによって具体的にいくらのお金が浮いたかということもあるが、役所の中で、積極的に仕事の見直しが行われる気風が生まれたことが大きいと述べられていました。まあ、それがホントなら良いことであります。
「外交面では、自画自賛になりますのであまり申し上げるつもりはありませんが、いわゆる密約問題の解明、外交文書公開に関する30年ルールを明確にしたことによって、昨日(23日)の新聞にもありましたが、沖縄返還に関する様々な外交資料の一部が公開されました。」
佐藤優さんによれば、岡田さんという人は典型的な官僚で、人にほめられるのが好きであるが、この密約問題解明は、自分としては力を入れ、指導力を発揮して実現したのに、案外に世論は支持してくれなかったので、以来、拗ねてしまったようだ、と評していました。
確かに、「外務省的」というか、「役人」的には密約を認めるということは画期的なのかもしれません。
でも、この問題に以前から関心のある人からすれば、「そんなのとっくにアメリカで公開されているじゃない」、「何をいまさら」という気分が強く、無関心な一般大衆はそもそも「密約」があったことを知らないわけです。だから、岡田さんが期待したほどに、世間は拍手喝采とはいかなかったということでしょう。
まあ、その辺の「空気の読めない」ところがいかにも岡田サン的なのかもしれません。
「そのほか、アフガニスタン支援や日韓併合100年に関する総理談話発出、EPAの推進――インド、ペルーと合意、韓国、EUとは再度交渉に入ることになった――などは、15カ月間の大きな成果です。」
同時に賛成・反対の議論が強い案件でありますから、このことを「成果」とよび、これによって拍手喝采されるかというと、それは無理というものでしょう。
「農業についても、直接支払制度を導入し、EU型に大きく舵を切りました。また、地球温暖課対策税を導入しました。」
この件についてはその理念は結構ですが、菅政権への支持率が低下している中で、もしも予期せぬ総選挙や自民党の政権復帰が起こったら、果たしてどうなってしまうのか、その方が心配になってきます。
「そういった様々な成果が15カ月間で行われたことを、是非皆さんに知っていただきたいと思います。「出来ない、出来ない」という議論ばかりでは、現実とは異なると思います。」
まあ、ワタクシ個人的には「出来ない、出来ない」という話ばかりするつもりはございませんし、確かに揚げ足取りのような話がメディアには溢れているのは確かだと思います。
しかし、民主党政権の一番の失敗は、やはり「普天間問題」の迷走にあるんでしょう。岡田さんの発言要旨にはそのことが触れられていません。おそらく、岡田さんにすれば「あれはもともとマニフェストにも書かれていないし、公約でもなかった」のかもしれませんが・・・。
少なくとも当時の党首が「最低でも県外」と述べたからには、外務省や防衛省の事務方の意向を飛び越して、アメリカの政権内部に直接交渉するようなパイプか人脈か何かがあるのかと思っていたら、何もなかったということです。
あれを外交上の稚拙さというか、失敗というかは別にしても、やはり、民主党政権を攻撃する側からすればいちばんの狙いどころになってしまったことは否めないでしょう。やはり、政権を取る前の準備不足ということなんでしょうか?
「その上で、私は、マニフェストについて、少し遅れるがこれから実現できるもの、これから約束の期間内にはできないと考えられるものについて再度整理をして、折り返し地点である来年度の予算編成期にマニフェストの修正版を明らかにし、国民の皆さんに説明することが重要ではないか、できたこと、できなかったことを明確にし、説明もすることも、大変重要なことだと考えています。」
まあ、最後に一言付け加えると、民主党はつくづくPRが下手で、政策の裏付けになる理論武装ができていない感じがするんですよね。それがないから、「いずれにしても、実績に関してあまり報道がなされないということは残念です」という結果になるんでしょうね。

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