まず企業が景気が良くなければ、給料も増えないという話で、じゃあ諸外国に比べて高い日本の法人税を減税しようということが言われる。
しかしながら、共産党の「赤旗」(6月24日)によれば、高いといわれる法人税(40%)は、例えばソニーだと12%、 住友化学は16%しか払っていないそうである。
日本のトップ大企業の利益にかかる法人課税には、様々な優遇措置があって、全体的に見れば30%程度ということ。
このほか、キヤノンが34・6%、トヨタ自動車が30・1%、本田技研工業は24・5%、パナソニックが17・6%、ソニーが12・9%。ブリヂストンは21・3%という。
大企業は研究開発減税で大幅な恩恵を受けるほか、海外進出を進めている多国籍企業には外国税額控除などの優遇措置がある。
法人実効税率は国税である法人税に地方税である法人住民税、法人事業税を加えた税率。共産党の「試算では、景気変動の影響を除くため各社の決算データから7年間の税引前当期純利益と法人3税の合計額で実際の負担率を計算し」、銀行・証券・保険業と純粋持ち株会社は除いたもの。
法人税については、表面税率は高いけれども、いろいろな政策税制あるいは減価償却から考えたら、実はそんなに高くない。税率は高いが、税率を補う部分できちんと調整されている。
大企業の実際の税負担率が高くない理由について二つの要因がある。
一つは、研究開発減税や租税特別措置などの政策減税。製造業では、実際の税負担率は30%台前半になる。
研究開発減税とは、企業が製品開発や技術改良のために支出した試験研究費の一定割合を法人税額から差し引ける制度で、研究開発費の多い大手製造業にとって得になる。
減税額の9割程度が資本金10億円以上の大企業で、2007年度決算データから推計するとトヨタ自動車は822億円、キヤノンは330億円の減税になっている。
二つ目は、大企業が税金の低い国に事業活動をすでに移しているため、全世界所得に対する実効税率はそれほど高くないからである。
さらに外国税額控除という、海外に進出した日本企業が外国で法人税を払う場合、その分を日本で払う法人税から差し引く制度もある。外国企業に優遇税制を敷いている途上国で法人税の減免措置を受けた場合でも、その分を払ったとみなして控除される場合がある。
要するに、法人税を下げるにしても、まず様々な控除や特別措置を見直した上で行うようにするべきなのだが、今の政権にそれをやる気はなさそうである。

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