ワタクシは、あるとき自衛隊出身で今は某私立大学のセンセイをなさっている方からお話をうかがう機会がありましたが、そのとき彼は「日本は、核兵器は作らないけれど、いつでも作れるということを見せておくことが抑止力になる」と強調していました。
まあ、そのときはフーンと思っていましたが、だんだんその言葉が気になってくるように思っていたら、今回の地震と原発事故です。
かつて「核の平和利用」という言葉がありました。そもそも原子力発電を可能にした原子力基本法を作ったのは、正力松太郎さんや若き日の中曽根康弘さんなどでした。
中曽根さんがなぜ原子力発電に熱心であったかといえば、今思うに、将来憲法9条の改正を行い、そのうえで日米安保も改訂して、自衛隊を「国軍」にした上での「核武装」という将来ビジョンがあったのだろうと思います。
もちろんご本人はそんなことはおくびにも出しませんが。
さらにいえば、かつて「商人国家論」を唱えた旧通産省の官僚で、資源エネルギー庁長官も務めた方が、あるジャーナリストに「私の本音は核武装国家なんです」と語ったという話です。
この人は、学生時代は丸山真男さんのゼミ生であったということでしたし、ちょっと屈折したハト派なのかと思っていたら、ホンネのところは違っていたと聞いて、ワタクシはビックリしました。
もちろん、今日本が核武装したら、中国や韓国が激怒するのはあたりまえですが、いちばん黙っていないのはアメリカであることは、これらの人々は分かっています。
そもそも国際原子力機構(IAEA)という機関が国連の中に作られたのは、旧敗戦国である旧西ドイツや日本が核武装をしないように、国内の原子力関係の研究所や実験施設や発電所をいつでも査察できるようにするためでした。
まあ、日本の右派の核武装論者の最後の弱点は、「そんなこと(日本が今核武装)したらいちばん怒るのはアメリカですよ」と言えばもはや何も言えなくなってしまうことです。
だからこそ、あの元自衛官の教授も、中曽根さんも、「日本は商人国家」だと言った旧通産官僚さんも、みんな最後の一言が言えないで屈折しているわけです。最後の一言、それは「日本も核武装する」ということです。
だからこそ、アメリカさえ許せばいつでも核武装できるようにするために、どんなことがあっても原子力発電は維持しなければならないし、できうればプルトニウムも利用するようにしたいわけです。
ところが今回の事故で、日本の原子力発電は少なくとも当面は頓挫せざるを得なくなるでしょう。だってもう日本のどこも原発関係の施設建設を受け入れる地域がないでしょうから。
でも、さるジャーナリストに聞いたら、「いやいや5~6年もすれば、またぞろ原子力はやはり必要だと言い始めるよ」といっていました。
かつて原子力発電所の設計をしていた大前研一さんもこんなことを言っていました。「アメリカがこの30年くらい原発が一機も作れなかったのは、スリーマイル島の事故があったからです。作れなければ、原子力の技術者も育ちませんし、研究者も四散します」。
テレビに出てくる原子力工学関係の研究者たちの言うことが煮え切らないのは、要するにもうこれで自分の仕事がなくなりそうだということで、「それどころじゃない」というのがホンネなんでしょう。

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