東京電力によれば、福島第1原子力発電所で3月に作業に従事し、内部被曝線量が未測定のまま連絡の取れない69人のうち、実在するかどうかが確認できない作業員が37人に上ったという。
松本純一・東電原子力・立地本部長代理は「(被ばく線量が増え、作業に従事できなくなるのを防ぐため)別の名前を使った可能性が否定できない」と語った。
37人は協力企業の社員として登録していたが、東電が各社に照会しても存在が確認できなかった。
事実、原発労働者として働く人たちの中には、「今の福島第一原発で働く気はない」と話す人が多い。原発の作業が危険だからではない。今となっては、福島第一原発の被曝線量が高すぎて、マジメに被曝線量を測定していたら、基準値を超えてしまって原発で働けなくなるからだという。
同原発では通常、放射線管理区域へ立ち入る人物をコンピューター管理していた。だが事故による停電でシステムが使えなくなった。4月中旬までは、作業員に外部被曝線量を測る線量計を貸し出すにあたって、氏名と所属する会社名を手書きさせていた。
震災直後で復旧作業がかなり混乱していたために、社員証や免許証などによる本人確認もしていなかった。
しかしながら、所在が分からないといっても、貸し出した線量計は返却されているし、線量も記録されている。
原子炉内に入構した人間がいたことは間違いない。本人と連絡が取れないままだと、後に健康被害が出ても労災認定が受けられない可能性もある。(もっとも、労災が認定されたケースは極めて少ないが・・・。)
作業時の被曝線量は労働安全衛生法に基づいて厳重に管理されるはずである。しかし、下請家、孫請け、第9次下請けまでいる原発労働者の現状からみて、電力会社がどこまで真面目に線量管理をやろうとしたのか極めて不明確である。
5月にも、宮城県での仕事に応募したあいりん地区(大阪市西成区)の男性が、求人内容と異なり、知らぬ間に福岡第一原発での作業に従事させられていた問題が発覚している。
京都大学の神田啓治名誉教授(核物質管理学)は、「どんな事態であっても身分確認は重要だ。労働基準法違反などのレベルではない。テロを想定した武力攻撃事態法にも抵触しかねず、原子力施設の安全防護上、看過できない」と語る。(産経新聞25日)
神田教授はまた、「米国はテロに敏感になっており、原子力施設への出入りを厳しくしている。日本の原発全体、管理が緩いという疑念を持たれたらいつテロリストに狙われるか分からない」と懸念を示したという。
しかしながら、現行の労働法規を厳しく適用すると果たして原子力発電内部での作業そのものが可能になるのであろうか?
労働基準監督官が原子力発電の中までやってこないから、これまで見過ごされてきただけではないのか?

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