福島原発事故は広島原発20個分の放射性物質を飛散させた。
放射性物質の汚染地域は、避難勧告された原発30キロ圏を超えて、飯館村、伊達市、南相馬市などの一部や、福島市、郡山市、二本松市などでもマダラ上に広がっている。
広島原発から飛散した放射性物質のうち、ヨウ素131は半減期8日ですでに検出限界以下の地域が多いが半減期30年のセシウム137が大きな問題になっている。
セシウム137は1940年代以前には地球上にはほとんど存在しなかったが、核実験と原爆によってウランの核分裂が発生し、大量に自然界に放出された。
セシウム137は体内に入ると胃腸から吸収され、肝臓、筋肉に分布し、100日から200日で胃腸から尿中へ排出される。
日本バイオアッセイ研究センターの福島昭治博士は、チェルノブイリ周辺におけるセシウム137の長期被曝の影響を研究している。その研究によると、低い線量の被曝が長期に続く地域では、膀胱癌が100万人当たり26.2人(1986年)から、43.3人(2001年)に65%増加した。
福島博士は、良性の前立腺肥大の手術の時に、一部切除される膀胱の病理組織の検討を進めた。その結果として、セシウム汚染地域の住民の膀胱には、高い線量でも中間的線量でも増殖性の異型性病変が起こっていることが発見された。
膀胱への低い線量でのセシウム137の長期被曝は、膀胱の慢性的炎症を引き起こし、これが前癌症状であると福島博士は発表した。
チェルノブイリでは小児の甲状腺癌の問題が有名である。
しかしながら、ヨウ素131が向上腺に集まりやすいという特徴はよく知られていて、甲状腺癌が多発することはかなり早くから懸念されていたにもかかわらず、広く認識されるには10年かかり、20年後にWHOなどによってようやく因果関係があることがコンセンサスになった。
膀胱癌の最初の報告は18年後、発癌のメカニズムが明らかになるのに23年。
このことは低レベル放射線被害の証明がいかに難しいかが分かる。地道な測定と、着実な研究の積み重ねが必要になっている。
しかしながら、セシウム137が母乳からも検出され、福島博士の研究が明らかにされた現在となっては、すでに膀胱癌などのリスクは増加しつつあると見るべきであり、もはや「ただちに影響はない」というレベルを超えてきたというべきである。
参照:(“チェルノブイリ膀胱炎”―長期のセシウム137低線量被曝の危険性 児玉龍彦
http://www.ishiyaku.co.jp/magazines/ayumi/23804_355_360.pdf)

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