放射性物質を外界に大量に放出した東京電力福島第一原発は、事故から4カ月を経た今になっても、撤去の前提となる原子炉の安定すらできていない。
もし核燃料棒が溶けて塊になったり炉外へ溶け出していた場合、冷温停止が困難を極め、効率的に、安定した冷却は難しい。
最終的解決は、核燃料と放射性物質を取り除き、原発を解体撤去する廃炉の実現である。
廃炉には、事故を起こさなかった普通の原子炉でも30年程度の時間がかかる。原子力発電所は、実は建設より廃棄作業の方が難しいともいえる。
そして、福島第一原子力発電所は破壊の程度がひどいため、事故処理にはほぼ永遠と言っていい時間がかかるだろうと思われる。
よく、チェルノブイリ原発の石棺のようなことを言う人がいる。巨大な構造物で建屋を覆った上、作業員の被曝を避け、放射性物質が外に漏れ出さないよう監視しながら作業を進めようというのだが、そこまで行き着くのを見届けられる日本人は、いま生きている日本人の中にはいないかもしれない。
廃炉とは、原発から使用済み燃料を取り出し、構造物を解体撤去して更地に戻す廃棄作業である。原発を建設するよりも、長い時間と労力を要する。そのうえ、そこからは何の経済的便益も生み出さない。
まさに後の世代へのお荷物である。ただ、廃炉を請け負う世界の原子力業界にとってはビジネスチャンスかもしれない。ただ、福島のケースだけはだけは別だろう。爆発した原発の廃炉はまだ誰もやったことがない。

0