24日のジャパンタイムズの社説は普天間基地移転計画の「非現実性」を明快に指摘しています。以下はその要旨。
非現実的な約束;普天間
(Japan Times Saturday, Sep. 24, 2011 Unrealistic promise on Futenma)
野田佳彦首相は、国連総会に合わせてニューヨークでアメリカのオバマ大統領と水曜日に最初の会談を行った。二人の指導者は、日米の同盟関係の真価で合意したが、オバマ大統領は野田首相に対し、沖縄でも人口密集地のアメリカ海兵隊の普天間基地(宜野湾市)を海岸部の辺野古に移設する計画を確実に進める努力を真剣に行うように求めた。
オバマ氏は野田氏に対し、計画が進展していることが結果として目に見える形にする時期であると語った。大統領はアメリカが6月の両国の外相・国防相会談で述べたことを強い言葉で繰り返した。そのとき同時に、アメリカは一年以内に普天間問題に関して具体的な進展を示すことが重要だと日本側に語っていた。
オバマ氏は明らかに移転問題に対して焦りと苛立ちを感じていた。それは、カール・レヴィン上院議員(上院軍事委員会議長)を含む数人のアメリカの議員が、アメリカ軍の移転計画を批判しているからである。その計画には、沖縄における新たな海兵隊基地の建設と約8000人の海兵隊員を沖縄からグアム移転する計画が含まれている。彼らはこの計画が、非常に高くつく、非現実的な案であると考えている。
オバマ氏の要請に応える形で、野田氏は沖縄の人々の理解を得るために全力を尽くし、普天間の機能は日米の合意に基づき辺野古へ移転させると語った。しかし、沖縄の人々の強い反対を見ればいかに彼の前途がどうなることかと人々は感じている。
野田氏は、守ることが非常に難しい約束をした。彼が沖縄に辺野古の計画を押し付けようとすればするほど、沖縄の人々の抵抗は強まり、沖縄の人々と政府の間の溝は深まるだろう。
他方、彼がこの問題を解決できなければ、オバマ政権を非常に失望させることになるであろう。
中国の軍事力の増強と日本近海で存在感を増す動き、北朝鮮の核兵器開発、朝鮮半島情勢の不安定、北海道の領土問題を抱える島々での実効支配を強めるロシアの動向を見れば、日米が協調関係を強めることは有益である。
しかし、両国の指導者は沖縄の人々の強い反対を前にして普天間基地の機能を辺野古に移すこの計画を実行することに固執することが果たして賢明かどうか、よく考えるべきであろう。そのような考えに固執することは、日米関係を傷つけるだけであろう。
日本政府は、2010年度から10年間、沖縄の地域開発を促進する新たな一括交付金を支出することを決めた。政府はこの交付金が沖縄の人々の辺野古移転への反対を和らげることを望んでいることは明らかだ。しかし、野田首相はアメリカの軍事基地問題についての沖縄の人々からの譲歩を引き出そうとするアメと鞭のやり方がもはや有効ではないことをよく知るべきであろう。
もし人々がこの交付金の中にアメと鞭的な要素を感じたなら、態度を硬化させ、中央政府は沖縄とその住民に差別的な態度を取っていると考えるに違いない。野田首相は、沖縄の人々の想像力が、琉球王朝の日本への併合や、1945年の沖縄戦と戦後のアメリカ軍による占領で人々が蒙った犠牲へと遡っていくその感情を考えるべきである。
野田首相はまた、沖縄の仲井眞弘多知事が最近ワシントンを訪問し、普天間基地の移転地が沖縄以外の日本の他の地域に選ばれるならば、問題はすぐにでも解決すると述べたことに注目するべきである。
辺野古がある名護市の市長は辺野古移転に反対しており、市議会の多数派も反対している。2010年2月、沖縄県議会は全会一致で普天間基地の機能を県外へ移すことを要求する決議を行っている。
辺野古移転計画を実現するためには、海上の土地を埋め立てる許可を取らなければならない。埋め立て許可は知事の権限である。
仲井間知事はワシントンでこうも語った。もし新しい基地が辺野古に建設されたならば、沖縄の人々抵抗の水準は強まり、当局は実力行使で対応しなければならなくなることが予想される。
レヴィン、ジム・ウェッブ、ジョン・マケインの三人の上院議員は、普天間基地を嘉手納空軍基地に統合することを提案している。この提案は、たぶん沖縄の人々には受け入れられないであろうが、現在の行き詰まりを打開するための現実的な動きを示そうというものであろう。
野田氏はアメリカに、辺野古移転計画を考え直し、沖縄が受け入れられる完全に新たな計画を実現する努力を提案するべきである。
経済上の問題においては、野田首相はオバマ大統領に対して、日本が環太平洋経済連携協定(TPP)の話し合いに参加するかどうか早急に結論を出すと語った。TPPが日本の利益になると言う保証はない。この連携は、一義的にアメリカの輸出を増やそうという戦略なのである。日本のアメリカに対する輸出を増やそうという、アメリカから日本への誘因力はそこにはない。TPPは、日本の農業、金融・保険業、サービス産業を強力なアメリカの攻勢に曝すことになる。
http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/ed20110924a1.html

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