竹中平蔵サンが、地方の駅前はシャッター通り商店街になっていて衰退しているなんてウソだ、商売を止めて引きこもっているだけだと語っていた。(「日本経済 今度こそオオカミはやってくる」竹中平蔵・富山和彦 PHP)
竹中サンによれば、シャッター通り商店街をなくすには「そこに住んでいる人が移転してくれて、その店や土地を別の人に貸してくれればいいだけ」だという。「商売ができなくなったのに、駅前の好立地に住み続けているからシャッター商店街になるわけで、商売のできる人、やりたい人に場所を譲ってくれれば、駅前が活性化する可能性がある」という。
だが現実は、「地元の若い人たちが空いている場所にお店を入れようと頑張っても、住人がものすごく高い賃料をふっかけたり」して、一回の店舗部分だけ貸すなんていやだ、よく知らない人が自宅の一部に出入りするのはかなわないということで、なかなか貸さない。
要するに、「しもたや」の住人という抵抗勢力がいるから、改革が進まないといういつもの竹中節になってくるわけであります。(P153)
ワタクシは竹中サンのいうことは80%正しいと思います。
しかしながら、シャッター通りの「しもたや」の住人の立場に立ってみれば、店を閉めてそこに住むことは、経済合理性にかなっている行動なんじゃないでしょうか。
これ以上商売を続けても赤字を出すだけ。しかしながら、年金などの収入があればそれなりに暮らしは成り立つ。そうなれば、わざわざ駅に近い交通の便が良い場所を明け渡すよりかは、そこに住み続けた方がいい。
この人たちを「抵抗勢力」呼ばわりするよりは、この人たちが郊外の別の住宅に引っ越したほうが得になるような、人を誘導するような政策を打てばいいだけではないでしょうかね。
同じようなことはTPP参加賛成派の人々の言っていることにも感じます。
だいたい、TPPに参加することで自由貿易を推進すればすべてが上手くいくみたいなことを言う人たちは、自動車や電気製品をアメリカの市場に売りさえすれば日本は繁栄するという「勝利の方程式」を信じて疑わない感じの人が多いように思われます。
これは昭和の初めに金解禁さえすれば景気が良くなると信じた人たちとよく似ています。あまり根拠のない信念に取りつかれている人々だと思います。
TPPに参加して農業を改革するなんて言っている人は、日本の農業も土地集約して大規模化すれば効率化された生産が可能になり、輸出も可能だといいます。
しかしながら、現実はTPPで輸入農産物が大量に流入すれば、多くの兼業農家は確かに生産を止めるでしょうが、彼らの所有している農地が専業農家や農事生産法人に貸し与えられたり、あるいは売却されることにつながるとは思えません。
多くの高齢化した兼業農家はますます自分のほとんど唯一の財産である農地を、死ぬまで手放さなくなると思います。まあよほどの好条件でも提示されなければ貸すことはおろか、手放そうともしなくなるでしょう。
ちょうど、駅前シャッター通り商店街と同じことです。
TPP賛成派が言うとおりに進めば、ますます農地の集約化は難しくなるに違いありません。それは規模拡大を図って今でも頑張っている一部の専業農家や、農事生産法人にとっても得策とは言えないでしょう。
「守旧派」を探し出して、この人たちをシバキ上げて溜飲を下げる改革派は決して事態を改善しないということは、シャッター通り商店街にせよ、兼業農家にせよ同じだと思います。

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