日本の中国嫌いの人々は、中国の危機は土地バブルの崩壊からだともう何年も前から言い続けている。
しかしながら、ワタクシは別に経済の専門家でも、中国研究家でもないけど、土地バブルがはじけたところで、中国の実体経済の成長の部分は相当あるのは確かだから、少々の混乱はあってもそれが「危機」にまでなるかどうかは疑問だと思う。
実は中国のホントの危機はもっと別な所にありそうである。
1980年代に西欧社会が低い出生率に悩まされるようになったとき、法的なケッコンにとらわれない同棲婚や婚外子の出生、離婚の増加、女性の社会進出、独居世帯の増加といった、家族制度の変容(崩壊???)による個人主義的な価値感への変動が原因と考える人が多かった。
しかし1990年代になって明らかになったことは、家族中心の価値観がより強いと思われた南欧や東欧、旧ソ連圏でも出生率の低下が露わになったという事実であった。
家族制度を重視する価値観が顕著な日本における出生率の低下は、これまでの出生率低下の通説を打ち破る出来事になった。
注目すべきは、アジアにおける出生率の低下はもはや日本だけの特徴ではないということである。2000年代になると、出生率低下は東アジアの韓国・台湾でも顕著になってきた。
2009年の合計特殊出生率は、韓国が1.15、台湾が1.03、香港0.97で、日本の1.27をさらに下回っている。
中国と言えば、人口増加を抑え得るために一人っ子政策を導入したという印象がいまだに強いが、出生率は1.6。タイも同じ1.6だという。
しかし、中国やタイは、都市部だけではなく、農村部で出生率が減少してきている。
中国では、上海などの大都市に、農村部からたくさんの人口が流入しているというイメージであったが、たしかに上海などは、日本で言えば東京と同じように人口増加が続いているものの、その周辺部の安徽省などの人口は明らかに減少しているそうで、むしろ農村の急激な過疎・高齢化が進んでいるという。
もはや東アジア全体で、晩婚化が進み、独身世帯が増加しているといえるのだ。
これは急激な経済成長、高学歴化(むしろ学歴インフレ???)によって結婚することは、「高い買い物」だという価値観が広まってきたというべきなのかもしれない。
一人で生きていくのもなかなか厳しいのに、結婚すること、子供を持つことは何よりも経済的に負担だという気持ちが若者に広まっている。
タイの農村部では、親は子供には農業を継がせたくない、そのためにより高い学歴を与えようとする。そのため農村に学習塾が進出し、そこに通わせる家庭が増える。そしてその教育費を負担するため、子供の数を減らす。
中国では、2030年頃から確実に人口減少が始まり、急激に少子高齢化が進むと言われる。
日本のデフレの原因は、何のことはない少子高齢化でマーケットが縮小したからだという説が正しいのかどうかワタクシは知らないが、高度経済成長のときにうまく機能した社会的仕組みや価値観が今や桎梏となり、変わりたくても変われない病に陥っている日本の轍を、中国はさらに日本より速いスピードで転がり落ちつつあるのかもしれない???
つまり、中国と日本がお互いを嫌いあっているのは、お互いが自分のイヤなところを見せつけられているような気がするからじゃないかと思うのであります。

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