森本防衛大臣は、就任後の記者会見で、海兵隊は普天間だけを沖縄以外に移設するのはできないけど、全部隊をワンセットで動かすなら鹿児島でもいい、と断言していた。しかし、現実的に沖縄以外で受け入れるところを探せないということも語っていた。
これまでの閣僚は、抑止力とか、地理的優位性という論理を持ち出して、沖縄以外に海兵隊を置くところはない、といってきた。その説明はうわべだけのものだろうと、少し事情が分かっている人は感じていたのかもしれないが、あくまでも首相以下、政府の関係者はそう言ってきた。
その点では、森本大臣は「誠実」だとは言えるだろう。だが、沖縄以外が受け入れないから、沖縄でいいのかという問題は、さらに重い。
そもそも沖縄基地問題は、「基地が多すぎるから減らそう」ということであったはずだ。
それが基地を沖縄県内で移動して、移動した後の土地を返しましょうという話にすり替わった。そして本土が嫌というから沖縄に押し込めるしかない、というホンネが出た。
それを森本大臣は明らかにし、それでも辺野古を推進するということになる。
これまでは、安保のために沖縄が犠牲になってくださいという話だったが、これからは本土が嫌がっているからガマンしてくださいという理由があからさまに語られることになる。
しかし、このホンネはあまりに醜悪じゃないか。つまり「差別」丸出しである。それでも東京の政治はこれを解決できない。
さらに醜悪なのは、アメリカ議会が軍事費を削減しようという意思を明確にしていて、沖縄の基地を縮小したほうがいいと言っているのに、日本の中央政府が「行かないで」とすがついているのが実態だということが、しだいに明らかになりつつあることだろう。
そこで、森本大臣はさすがに軍事の専門家だけあって、海兵隊がセットならば鹿児島でもどこでもいいと本当のことを言ってくれた。つまり鹿児島がいいのなら、グアムでもオーストラリアでも、ハワイでもいいということになる。
もちろんハワイでは緊急事態に際して遠すぎる、とかいろいろ問題はあるだろう。しかし、緊急対応部隊としての海兵隊にとって、どこまでが遠くて、どこまでなら対応可能なのかはっきり線引きを引くのはそもそも不可能だろう。
軍隊はあくまで政治が与えた予算と基地を使って国家戦略を実現するための作戦を立てるものだからである。沖縄から部隊をハワイに移したのなら、そのときにできることはなにかに基づいて、作戦を書き換えるだけだと軍人は割り切っているに違いない。
アメリカ軍は、与えられた条件でベストの仕事をするという態度である。ところが日本政府は、軍隊の要求を満たさなければ戦略が立てられないという議論がまかり通っている。しかも、それが他国の軍隊のことなのである。
だいたい、アメリカ軍が沖縄を欲しているとみんなが思いこんでいるというのも非現実的だ。政府の「すり込み」が成功してきた成果かもしれない。防衛白書にも沖縄の「地理的優位性」などということが強調されていたりする。
しかし、新しい「民間」出身の大臣は、ホントは「沖縄以外でもいい」という言葉を語った。
まさか、野田総理は「民間」人である防衛大臣に「みんな嫌がっているから辺野古をのんでくれ」という説得をさせるつもりなんだろうか?
もしそれをやるつもりなら、選挙で選ばれた国民の代表としての政治家がやるべきだろう。しかし、あまりに醜悪なオハナシだとしか言えない。

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