『空き家急増の真実』(米山秀隆著 日経新聞社)について中島隆信・慶大教授が書評を書いている。(7月23日読売新聞)
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厚生労働省の推計によれば、日本の人口は2060年には8600万人程度になると予想される。少なくとも人口規模で日本が縮小に向かっていることは明らかである。住む人の数が減れば、住宅の数も減るのは当然だ。本書は、こうした当たり前の予測に基づき、日本の住宅政策の方向転換を提言するものである。
そこに示される事実は衝撃的だ。最新の調査(2008年)によると、日本には約800万軒の空き家があり、その数は年々増加の一途を辿たどっている。そのうち、入居待ちや別荘などを除く「純粋な空き家」は実に270万戸に上る。そのなかには、かつて親が住んでいた家を放置したままのケースなどが見られるという。
こうした空き家の増加は周囲の住環境に悪影響を及ぼすと著者は指摘する。住人を失った家屋は朽ち果て、放火の対象や犯罪の温床となりうる。空き家率が高まったマンションは管理組合が機能しなくなってスラム化し、共同体とはいえない「限界マンション」となる。
著者の提示する処方箋は明確だ。新築の抑制と中古住宅の活用への政策転換である。これまでの日本の住宅政策は戦争直後の絶対的な住居不足の解消を目的としたものだった。そのため、公団や自治体による公共賃貸住宅の供給や税控除による持ち家取得の促進が政策の中心となった。さらに近年では、住宅建設は景気回復や節税の手段となっている。住宅の絶対的不足が解消された現在、市場メカニズムを活用した既存住宅の稼働率向上こそ政策の柱にすべきという著者の主張には説得力がある。
人口減少社会となった日本にとって、本書のテーマは住宅だけに留とどまらない。増え続ける耕作放棄地、無縁墓、休眠宗教法人などは、撤退と再生の仕組みを持たないことが原因のひとつと考えられる。新しいものを作るのではなく、今あるものを活用しビジネスに結びつけていくことの重要性を本書は教えてくれる。
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そういえば、数日前に「お宅の土地を有効利用して、アパート経営などなさるおつもりはありませんか」っていうセールスが来た。
「今、日本は空き家が急増しているんでしょ。これからアパート経営なんてしたって、借り手がいるんですか。それに新築ならともかく、少しでも古くなれば、たちまちメンテナンスが必要になる。結局、入るお金より出てく金のほうが多くなりそうじゃないんですかね?」
そういったら、「ああ、どうも・・・・」といってすごすごと引き上げていった。
セールスなら、「いえいえ、そんなことは・・・」って話をつなげないとダメじゃないの、と思ったけど。
まあ、売り込みに来た方も、自分の商売にそんなに自信がないってことなんだね。アンタの会社、もう終わってますよ!

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