自民党総裁選は、安倍晋三サンが決戦投票で石破茂さんに逆転勝利しました。でも、地方票の方は石破さんがかなりの差で勝っています。
これは国会議員に石破さんは人気がないということなのかどうか分かりませんが、どちらかといえば一般国民に近いところにいるであろう党員票と国会議員票の違いはなんだか気になるところです。
まあ、民主党政権への失望があるから、安倍新総裁は「近いうち」に行われるはずの解散・総選挙で政権を奪還できる可能性が高いはずです。
しかしながら、安倍サンは6年前の政権担当によって大きな挫折を経験しているわけですから、そこから学んでさらに大きく飛躍することになるのかどうか、はたまた同じような失敗を繰り返すのかに注目しています。
安倍政権の失敗については、上杉隆さんの「官邸崩壊」(新潮社)にくわしくその経緯が描かれています。
これを読むと、彼は首相として、日本の官僚支配を改革して「政治主導」を実現しようという意気込みがあったことは分かります。ただ、自分の周囲に気心の知れた「お友達」ばかり集めすぎて、情報過疎に陥ったことが印象的です。
政治主導ということでは、鳩山由紀夫元首相の民主党ともども、その志は成功しなかったことになります。
鳩山さんが首相になるまで、首相官邸における重要政策の決定のプロセスについて理解していなかったように、安倍サンの失敗もおそらくそれと同じようなところがあったと感じられます。
まあ、一般国民にすれば、二人の失敗によって、日本の官僚支配の統治構造の強さを改めて感じさせられたということでしょうか。だが、3.11の原発事故でその統治機構そのものが、目前の危機になんら手を打てないメルトダウン状態であったことを合わせて考えなければなりません。
安倍サンが前回の体験から多くを学んでいるというのがホントなら、日本の統治構造の改革が前進するかもしれませんが・・・。
前回の安倍内閣のもう1つ大きな失敗の原因は、さまざまな政治課題に対してあれもこれも手を付けようとしたことでしょう。
改革をするなら、一内閣一仕事だというくらいの気持ちが必要だと言うのが、今の日本の現状でしょう。
あまりにもたくさんの問題があるからあれもこれもと思うのは当然ですが、現代の社会は複雑に問題が入り組んでいます。政治の力ですべてが解決するわけではありません。
安倍内閣は外交、安保、憲法、教育などのいくつもの基本政策の転換にまで手を伸ばし過ぎ、結局各方面から反発を受けて、挫折しました。
政治家が大風呂敷を広げるのはかまわないし、国民に対して問題提起をして議論を起こすのは結構ですが、議論する中で国民自らが解決できる問題も浮かび上がってくるはずです。
政治が自ら手を下して、改革のために権力を行使する問題は思い切って絞り込み、その他の問題は地方自治体や国民住民が自ら解決することに期待し、その手助けをするにとどめたほうがいいように思います。
総理大臣は、当面する緊急の重要課題を選び出し、明確な指針を示してそこに力を注ぐことが期待されています。
心配なことは、その重要課題の選択を誤って、官邸が独り相撲に陥り、国民・有権者の心が政治から離れてしまうことです。
たとえば現在話題の領土問題があります。確かにこれは重要な政治問題に違いはありません。
しかしながら、この問題は日本国内の世論の動向に振り回されていては、問題はかえって解決から遠のきます。日韓、日中の対立は、世界が凝視している問題です。
この問題を収めるのは、結局のところ国内の世論というよりは、国際的な世論の動向なのでしょう。
挑戦的、好戦的な対応で問題を解決しようとすれば、一時的な世論の支持は獲得できても、国際世論に警戒感が高まってしまうことも考えられます。
利害関係の外に会って、ものごとを冷静に見ている国際世論の動向によって、どこに問題が落着するかが決まることになることを、安倍サンは忘れないでいただきたいものです。

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