日本が遅ればせながら「通貨安戦争」にいよいよ参入したというのが、安倍政権誕生の大きな意味なのであろうという感じがする。
「通貨安戦争」などというと、それは「近隣窮乏化」という言葉を思い起こす。1930年代の大恐慌が各国の通貨切り下げ競争で激化したという歴史を思い起こす。
無論、当時と世界経済の構造も違うだろうから、単純に「通貨安戦争」から「近隣窮乏化」、そして戦争へなどと言うつもりはない。
だいたい、大恐慌から第二次世界大戦に至る経済史は現在ではさらに研究が進んでいるんだろうから、断定は避ける。
どこかの国が通貨切り下げをしても、短期的に外国にはマイナスの影響を受け、さらにほかの国も金融緩和をするのは確かだが、おそらく両国ともにインフレ率が高くなるけれども、それぞれがインフレターゲットを設定していれば、おのずとインフレ率は許容の範囲内で収まり、金融緩和競争はいつまでも続かな・・・というのがいわゆるリフレ政策を支持する人の意見である。
確かに先進国ではインフレ目標を設定している国が多く、2%程度のインフレ目標が守って金融政策の運営を行えば、無暗な為替切り下げ競争には陥らないだろう。
しかしながら、日本は遅れて金利引き下げ競争に参入するわけで、当然それを快く思わない海外から批判、すなわち中央銀行首脳や欧米のビジネス界からの牽制球が飛んでくるだろう。
金融政策は、かなりハイレベルでの言葉の戦争の世界に参入することにもなる。同時に、先進国の通貨安政策で流れ出す投機資金の動きに神経をとがらす新興国との間の外交にも心を砕かなければならない。
果たして後ろから前からタマが飛んでくる戦いの中に参加する準備が日本の政権にあるんだろうか?

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