「ブラック企業」(文春新書)という本が売れているらしい。大学や高校で、熱心な先生がいるところでは、労働法教育が行われるようになった。
アタシは1970年代後半に大学生だったわけだけど、あのころ労働法に興味を持っているなんて、ほとんど変わり者扱いだった。だって、日本のカイシャはあのころ、ほとんどが今でいうブラック企業だったからだ。
確か「ブラック企業」の中にも書いてあったような気がするが、高度成長期の日本のカイシャは、長期の雇用を保証してやる代償に、労働者にあらゆる種類の仕事を好きなようにやらせ、長時間労働、休日出勤も強制してきた。
それが1990年代後半になると、派遣労働の範囲や非正規雇用の拡大などの労働法制の規制緩和が行われ、長期の雇用保障(定年までの終身雇用)というアメすら危うくなって、残るは会社の思うままに働かせる長時間労働のみが残った。これがつまり、現在のブラック企業というヤツである。
定年まで雇用してやるからその代りに労働法なんぞという、シャラクサイことは言うなというのがつまりアタシの大学生の時代の常識だったのだ。それが今、ようやっと労働法によって一人一人が身を守るという当たり前の常識が見直されてきたということなんだろう。
ただし、まだまだ一部の熱心な学校や教師がいるところでのみ、労働法教育が行われているにすぎず、相変わらず基本的な労働法の知識もないままに就職活動を始めている若い人が多いのが実情だろう。
大学の就職課とかは、労働法教育なんかをして企業に嫌われることを恐れていたりすることが多いようだ。

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