本間龍「電通と原発報道」(亜紀書房)に書いてあったと思うが、普通、テレビやマスメディアで大手広告代理店出身の有名人といえば、大抵は制作部門の仕事をしていた人のことである。しかし、それは電通にせよ博報堂にせよ、表向きの仕事であって、営業部門で働く人は顔を表さないものである。
地上波テレビメディアに強く食い込んでいるのは電通の方だろう。いずれにせよ、営業部門で働く人たちは新聞、雑誌、テレビを詳しくチュックしていて、自分が担当する顧客企業に関しての好ましくない報道が出れば、すぐにご注進に及ぶ。
例えば新聞社は一応、編集部門と広告・営業部門は分離していて、広告代理店が普段付き合っているのは後者の人々である。自社にとって好ましくない報道が出たからと言って、すぐに編集部門に「圧力」をかけるようなことは普通はない。
しかしながら、新聞社の営業部門はその種の圧迫は別に珍しいことではないだろう。
アタシは1980年代の初めごろ、大手広告代理店から仕事を請け負う小さな調査会社で仕事をしていたことがあるが、そのころの代理店営業マンの印象は、大学の体育会出身だったり、有名人の子弟のコネ入社の方々だったりが多かったような気がする。まあもちろん、個人の知り得る範囲は限られているから、すべてがそうだとは言わないが。
そんなことでは人材が劣化するのではないかということを言う人がいるが、そんなことはない。要するに営業の仕事は、政界、財界、マスコミに人脈でつながっているほうが仕事を取りやすいのだから、むしろ体育会系やコネ入社の有名人子弟のほうが有利に働くことも多い。
まあ少なくとも、バブル前夜のイケイケドンドンの時代には、そういう雰囲気があったのではないか、と今にして思うのである。正直言って、そこから仕事を請け負う会社の人間は、代理店営業マンたちを内心バカにしていた気味があったような・・・。
多分、ここから先はワタクシの推測だけど、それが90年代初頭のバブル崩壊とその後の経済停滞の時代を迎え、一般企業の広告宣伝費の削減が続くなか、独占事業であった電力業界の流すお金の重みが、広告代理店にせよメ大手ディア企業にせよ、非常に重くなっていったのではないだろうか。
3.11によって表に現れてしまった電力業界のマネーの肥大ぶりを見て、ワタクシはそんなことを考えたのである。

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