憲法解釈を変更して「集団的自衛権」を行使できるようにする安倍総理のもくろみは、一見成功したように見える。
しかしながら、現実は集団的自衛権と個別自衛権のグレーゾーンの事例をなぞっただけで、もしも秋の臨時国会以降に関係法案の修正が行われる中で、純粋に集団的自衛権の行使にあたる部分に触れるものが出てくれば、それは今度こそ違憲のおそれが濃厚になるだけだ。
安倍総理は、集団的自衛権を認める憲法解釈を閣議決定で行うために、内閣法制局長官を異例の形で交代させた。その際に長官の座を退き、最高裁判事に就いた山本庸幸氏(63)は、最高裁判事の就任会見の際、明快に「集団的自衛権の行使は、従来の憲法解釈では容認は難しい」と語った。
そもそも最高裁判事が就任の会見でこのようなことを述べることは、極めて異例だった。
安倍首相は解釈変更に消極的だった山本氏を法制局長官から外したが、これは普通なら更迭ということになるのだが、政権としては、世間からは更迭ではなく出世に見えるようにカモフラージュするために最高裁判事というポストを用意した。
しかしながら、役人の世界においては、違憲立法審査権を持ちながら、さまざまな制約があって憲法審査は回避する裁判所という司法の場よりも、実質的に憲法解釈の決定権がある法制局長官という職のほうが、権威があると見られている。
その職にプライドを持っていた山本氏にすれば、安倍首相のやり方は許せないと思うのは当然であろう。
その山本氏が、憲法解釈を最終判断する最高裁判事として「異例の」発言をしたことは、ある種の重みを持っている。
つまり、もしも安倍首相がさらにこれからもその座に居座ろうとするならば、裁判所がこれまでの慣例を破って行政府の長たる総理大臣の行う行為を違憲と判断するという、異例の行動を行うかもしれない、という宣言をおこなったということなのかもしれない。
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