少し前までは、中国も経済成長すればやがては複数政党制になり民主化するという言説がアメリカあたりでは言われていたようだが、最近はあまり聞かない。
今となっては、アラブの春とかいう中東の民主化なるものが、欧米系の「民主化NGO」などを通じた工作活動の影響が強かったことはかなり明らかになってきている。もちろん、すべてが欧米の陰謀だなどということはできないにせよ、欧米流の民主主義を輸出するNGOやら民間団体の暗躍が、たとえばウクライナなんかでも見られることは明らかだ。
息子のほうのブッシュ大統領の愛読書だったナタン・シャランスキーの『なぜ、民主主義を世界に広げるのか――圧政とテロに打ち勝つ「自由」の力』(ダイヤモンド社, 2005年)なんかは蔭ながら今でも共和党系アメリカ人に影響力をもっている。
しかしながら、この種のイデオロギー的な民主主義至上論の弊害として、イラク戦争後のイラクの混乱や、さらにいえば北朝鮮の崩壊を見越した強硬論がかえって核兵器開発を招いた事実が上げられる。
今でも中国のバブル崩壊を声高に叫ぶ人がいるけど、冷静に考えれば、たとえ中国のバブルが崩壊して日本のように長期デフレになったとしても、そして中国共産党の一党支配が崩壊したとしても、別にそれで中国という国がなくなるわけではない。
しかしその前に、西側の民主主義なるものがこのまま安泰なのか、そこに人々の不安が募りつつある。つまり、今の西側民主主義は資本主義ではあるが社会民主主義的な所得再配分政策が機能し、金融機関が規制のなかで、あくまでも国内市場を重視しながら活動していた20世紀後半の一時期のなかで有効に機能した政治システムにすぎなかったのではないか、という根源的不安を、少なからず西側世界の人たちが感じているところであるからだ。
中国が世界第二の経済大国になり、やがてアメリカを追い抜くなかで、民主化(複数政党制)なき経済発展が可能であったことが証明されてしまうだろうという事実の重みが、人々を不安にしている。
まあ、中国の政治エリートにしてみればそれどころじゃない、別の不安にさいなまれているんだろうけどね。

0