1970年代、ワタクシがまだ大学生だったころ、さる高名な政治学者が日本はアジアで唯一議会制民主主義が定着した国だと発言した。
確かに韓国は朴正熙大統領下の軍事独裁政権だったし、台湾も戒厳令下にあり、未だ民主化にほど遠かった。
しかしこれらの国は1980年代後半からめざましい民主化を遂げた。
ワタクシは自民党一党優位政権が続く日本は民主主義という点で後れを取ったように感じた。
2009年の戦後初めてとも言える本格的な政権交代があっても、ワタクシは懐疑的であった。民主党は政策的にも政治手法的にも行き詰まりそうな感じがした。
でもせめて、次の衆院選をかろうじて勝ち残って、八年間自民党を野党の座においておけば、ひょっとして日本にも本格的な民主主義が定着するかと思ったりはしたが、それは甘い見方だった。
民主党政権の三年間で自民党は、もう二度と下野することがないようにするために、あらゆる手を打つ決意だけはしたようだ。自民党の改憲草案を見れば、九条の平和主義云々より以前に、人権の尊重や権力の抑制と均衡という考えがこの政党にはないことが明らかである。
おそらく日本の民主主義は、アジアの権威主義的な政治体制であるマレーシアかシンガポールに似たものになりそうである。野党は存在しても、それはホントの少数意見のはけ口でしかない。
まあもしも自民党が次に下野するとすれば、それは選挙による政権交代というよりは、財政破綻によって、超党派の「実務派内閣?」みたいなものができる時という、イタリア型政治みたいなものになるだろう。

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