「昨日お電話したキムラですが」と言った相手は、トレーニングウエアーの中年の男性で、背が高い眼鏡の人でしたが、どういう訳か手に沸騰して湯気が立っているやかんを持っていました。
「やあ、キミがキムラ・フトシ君か。ボクは黒田太郎と言います。今日は、校長に内定している清水教授は大学の講義がありますから不在ですが、藪原さんという事務責任者がお待ちしていますのでどうぞこちらへ」
と言われたが、板切れで広い部屋を仕切っただけの面会室みたいなところに通されました。
広い部屋に無造作に机が並べられていたんですが、人影は少なくて十人ぐらいが机に向かっていました。
「おーい。藪原センセー、どこ行っちゃったんだろうね」
「いやさっき、グランドに土を入れるのを手伝うとか言ってましたよ」
「約束の時間、忘れちゃったのかな。困った人やね。ああ、キムラ君。今日はこの後何か用事がありますか。ないの?じゃあ、ま、ゆっくりしてって。そのうち現れるからさ」

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