ロッキード事件というと田中角栄サンの逮捕劇がまず思い出される。
しかしながら、よく考えるとあの事件はロッキード社の航空機売り込みに関する各国への工作活動が問題となったもので、日本はその中の一部に過ぎなかった。
さらによく考えてみると、当時はカーター政権の時代だった。カーター大統領は、一期のみでその座を退いたから印象が薄いが、ベトナム戦争後のアメリカで反・軍産複合体の機運が彼の時代には盛り上がった。
カーター氏は南北戦争以来初めて南部から選出された反・ワシントン色の強い大統領であった。だがそれが徒となったのか、当選後からワシントンに巣喰う手練手管の行政官僚やロビイストの群れの中で孤立化していった。
田原総一郎氏などが、田中角栄は日本独自の資源外交をアメリカの意向を無視して進めようとしたからその報復を受けて失脚させられたと言っている。この「伝説」は、アメリカの意向に背いて同じ路線を進めようとする日本の首相は必ず失脚するというものだった。
しかしこの「伝説」は、よく考えてみると何か変だ。あたかも日本だけがロッキード事件で狙い撃ちされたような感じが漂っている。
実際は、カーター政権というアメリカ政治史上稀な(もしくは特異な?)政権の、軍産複合体の活動に手を入れようとする試みのなかの一つのエピソードに過ぎないような気がする。もちろんそんなことをしようとしたカーター政権は様々な形で攻撃され、やがて軍産複合体の申し子のようなレーガン氏に選挙で大敗を喫してしまい、政治の表舞台から去って行った。

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