群発地震が続く熊本市周辺には布田川・日奈久断層帯という大きな活断層が確認されていた。
大分県南部にも別府・万年山断層帯などの大きな断層がある。
国土地理院の断層地図では、2つの断層帯は阿蘇山付近で一旦途切れる。
だが阿蘇山には活断層がないのではなく、断層地図に活断層が確認されていないだけである。
実は多くの断層が分布している可能性が高い。
ただ、阿蘇山周辺には分厚い火山灰が堆積しているため、調査が難しく、これまで十分な調査が行われなかったために、たまたま活断層が見つかっていないだけだ。
そのために、地図には断層が書き込まれていない。
ところが一般人は、地図に活断層が書き込まれていない場合、そこには活断層が存在しないことを意味すると思っている。
今後の調査で、大分の別府・万年山断層帯と熊本の布田川・日奈久断層帯が実は続いていることが確認される可能性は否定できない。これまでよりも多くの研究者が調査を希望し、たぶん難しくて避けられてきた調査が進むからだ。
オーバーに言えば、現在大きな活断層として地図に書き込まれているものは、これまでに研究者の興味が集中し、調査に予算がつき、より多くの研究がなされた場所だったということであるか、調査が比較的やりやすい場所に限定されていたということである。
四国の北部を横断する中央構造線断層帯について、国土地理院の断層地図では中央構造線断層帯は豊後水道で一旦切れていることになっている。
しかし、これも実際は海底の断層を調べることが難しく、調べ切れていないだけで、これが大分の別府・万年山断層帯、そして熊本の布田川・日奈久断層帯へとつながっている可能性は十分にあり得る。
地震や地層、活断層などについては、未知の部分が多い。大地動乱の時代というか、再び地震活動期に入った日本は、いつどこで大きな地震が起きてもおかしくない。
政府は、震災の被害を抑える目的で活断層を示した断層地図や地震ハザードナップといったものを作っている。しかし地震に関してはまだ未解明な部分も多いため、そうした情報を過信すべきではない。
阪神淡路大震災や東日本大震災の震源地は、ハザードマップでそれほど危険とはされていなかった。
今回の震源地となった熊本も特に危険性が高いとは見られていなかった。台風や水害に関しては警戒していても、地震はまさか起こるまいと考えていたのは、住民も行政も同じではなかったか。
ハザードマップや断層地図に活断層が記されていない場所は「活断層がない」のではなく、「活断層があるかどうか分からない」地域なのであるから、この辺を誤解すると活断層が書き込まれていない地域の住宅の耐震化率が全国平均よりも低くとどまるなど、地震に対する備えに弊害も出てくる。
ハザードマップや断層地図を過信(誤解)して、危険とされた地域に過度な地震対策を行う一方で、危険性が低いとされた地域は地震対策や防災対策が疎かになっているのが日本の現状なのであろう。

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