「来年1月解散説 永田町に浮上」「北方領土交渉 信問う大義に」――という9月17日の日経新聞記事以来、まるで「解散風」を煽るかのように、大新聞テレビが一斉に「1月解散説」を流している。
12月15日にプーチン大統領と会談した安倍首相が、「北方領土の返還」を外交成果にして解散に踏み切るというストーリーである。
しかし、降って湧いたようなこの「解散風」は、どうにも不可解である。
この解散風が異様なのは、メディアが発信源になっていること。政権幹部からリークされた話をそのまま記事にしている。
二階幹事長などが表舞台で“解散発言”を口にすると、喜々として発言をタレ流している。
いま解散風が強まると誰が得をするのか、なぜ安倍自民党は解散風を吹かせようとしているのか、まったく気づいていない。
安倍首相は表向き『解散は考えていない』と否定していますが、強まる解散風にご機嫌である。
プーチン大統領と「北方領土返還」で合意した後、来年1月解散。 いま流布されている「解散シナリオ」には、カラクリが隠されている。
北方領土は国後島、択捉島、歯舞群島、色丹島の4島。いずれも日本固有の領土。だから4党一括返還をこれまで主張してきた。ただし、森政権のとき2島先行返還の話が強調されてもきた。
12月15日の「安倍―プーチン会談」では、歯舞、色丹の2島返還で合意する可能性が高い。
読売新聞は「北方領 2島返還が最低限」「平和条約『4島帰属』前提とせず」(9月23日)と1面トップで報じている。
しかし、歯舞、色丹の「2島返還」という決着は本来外交敗北となる。つまり「国辱」ものである。尖閣問題で大騒ぎしている勢力が黙っているのか不思議である。
北方4島のうちの2島といっても、歯舞と色丹の面積はあわせても7%にしかならない。
しかも、2島の返還は、すでに鳩山一郎内閣時代の「日ソ共同宣言」(1956年)で合意している。
日本政府は「4島一括返還」を求めてきたはずである。2島返還だけなら、歴代首相は全員、実現できた。
しかも、安倍首相はプーチン大統領に「8項目の経済協力」を提案しているから、巨額な経済支援もしなければならない。
功名心にかられ、歴史に名を残したい安倍首相は、プーチン大統領と「2島返還」で握手するつもりだ。
「4島一括返還」を訴えてきた勢力から批判の声が出るだろうが、そうした批判を1月解散を打つことで封じ込めてしまえというのが目的だろう。
「安倍官邸はメディアを使って『70年ぶりに領土が返ってくる』『4島返還にこだわっていたら1島も返ってこなかった』という祝賀ムードをつくり、そのうえで2島返還について信を問えば選挙に勝てると踏んでいる。
民進党をはじめとする野党勢力が弱体の内に選挙に勝ってしまえば、2島返還は国民に支持されたことになる。
「北方領土」と「1月解散」には、そうしたカラクリが隠されている。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/191835/1 参照

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