北朝鮮各地で4月上旬から、治安当局が全世帯を対象にして家族に不在者がいないかどうか調査を始めた。
各世帯の脱北者の有無を確認するためとみられる。不在者の居場所を説明できない家族ら千人以上が拘束されて厳しい尋問を受けている模様。(朝日新聞5月31日)
また、平壌市当局は17日から、17歳以上の住民に新しい身分証を発行し始めた。住民の居住実態を調べて脱北者を把握する活動の一環とみられている。
これまでも、脱北者を出した家族の取り調べはあったが、全世帯を対象にした一斉調査は異例だという。
昨年11月のデノミの失敗で経済危機に陥っているといわれるが、実態はいわゆる通貨単位の変更というデノミではなく、自由化された経済で利益を得た人々から財産を召し上げる結果になった。
当然ながら、人々の当局に対する反発が高まったなかで、3月下旬に韓国海軍哨戒艦「天安」の沈没事件が起きた。
これによって半島情勢が緊迫した。だが様々な出来事を時系列でみれば、民衆の不満を対外的に逸らそうという意図が見えるといえよう。
脱北行為を食い止めようと当局が住民管理を強化したとみられるが、同時に中朝国境に中国軍が終結している。もし武力紛争が起きた時に、中国側に難民が押し寄せるのを防ごうという中国側の意図も見える。
もっとも、当局もある程度、国境を越えて中国側に出た人々が、中国側での経済活動から得た資金を「送金」することを、かつては黙認してきた。
脱北者関係者などは、治安当局者に人民元などの外貨や、家電製品などの「わいろ」を渡して見逃してもらっていた場合もあったらしい。
現在の住民管理としては、午後6時以降に当局者が各家庭を訪れ、戸籍に登録されている家族がそろっているかを確認し、不在者がいれば、居場所や不在理由の証明を求め、証明できなければ、残された家族を当局の関連施設に拘束して、さらに取り調べを受けるのだという。
脱北者が複数出た家族は処刑されることもあるという。
調査は4月上旬から始まった模様。家全員が拘束されたのか、空き家になった住居が目立つようになった町もある。
地方よりは恵まれた暮らしをしている平壌市内の住民に対して、今回新たに発行しはじめた身分証は、写真のほか、氏名や住所、出生地、民族などが記載してある。
新身分証に記載された情報はコンピューターで管理されるという。5月10日ごろから各家庭に通知があった模様。期限内に手続きしないと身分証が発行されず、身分証がない人は罰せられるという。
住民の状況を細かく調べ、不審者の摘発や脱北者の有無などを把握する目的があるとみられているが、これも引き締め政策の一環と見られる。

0