2012年8月16日、南アフリカの北西部のノースウエスト州のマリカナ白金鉱山で、デモで集まった鉱山労働者へ警察が発砲して34人が射殺された。
鉱山労働者の賃金は4000ランド(約3万7000円)で、安すぎると訴え7000ランドを要求していた。
経営者との交渉権を持っている全国鉱山労働者組合(NUM)は、経営よりだとして労働者から信用されていない。労働者たちは直接交渉しようとした。
白金鉱山のロンミン社は英国の会社であった。大規模な事業拡大で経営が悪化していたという。
NUMの創設者であるラマボサ氏は、アパルトヘイト時代、数々のストライキを行い、鉱山労働者から絶大なる支持を得ていた。
1994年にアフリカ国民会議(ANC)が政権を握るとANCの重要ポストについた。現在、ラマポサ氏はANC副議長。議長はズマ大統領である。
事件発生時、ラマポサ氏は労働組合ではなく、ロンミン社の取締役となっていた。
ロンミン社は「賃金交渉はNUMを通じて交渉に応じる」と言っていた。しかし、NUMはマリカナ鉱山の過半数の労働者を代表する労働組合であったが、賃金交渉に取り組もうとしていなかった。
そのため、労働者はNUMの事務所へ向かった。労働者たちはオノやナタを所持していた。
NUM事務所から職員が出て来て発砲し、2人の労働者が死亡した。NUMは「組合員を攻撃するつもりはなく、発砲は正当防衛だ」と主張した。
労働者は近くの岩山に集まっていた。そこはローミン社の土地や公の道路ではなく、デモを規制される場所ではなかったが、鉱山労働者たちは、働いている労働者がいる白金鉱山へ向かおうとして警察に止められ、武器の放棄を求められた。
そのとき警察が発砲し、34人の労働者が死亡したという。死亡者の中には、発砲現場から遠くはなれた場所や、岩の影に隠れているところを頭上から撃たれている者もいた。救急車が現場に入るのが許されたのは発砲から1時間後だったという。
270人の鉱山労働者が暴動の罪で逮捕され、後に容疑は殺人罪に変更された。警察官は1人も逮捕されていない。
事件のあともストライキは4週間続き、結局、ロンミン社は最大22%の賃上げに応じた。
事件の4か月後、ラマポサ氏はANCの副議長に選出された。ラマポサの推定資産は7億ドル=約700億円だといわれている。
南アフリカでは、2000年代になってからBEE(ブラック・エコノミック・エンパワーメント条項)とい制度が作られた。南アフリカの白人企業の保有する資産の15%を黒人企業に無償提供しなければならないという。
このBEEの恩恵に預かった方たちの多くは、かつてのアパルトヘイトと闘ったてきた人たちや、与党ANC幹部との繋がりの深い親族や友人だった。マンガン鉱山の採掘権を手に入れたアパルトヘイト時代の活動家の女性は、その友人の方たちに株を分配し、日本円にして2000万円の配当したという。
BEEの恩恵に預かったのは8%の黒人の方たちで、貧困層の方たちの生活はいまだ改善されず、政府への不信が高まっている。
(参照 『虹の国・南アフリカ情報・2014』melma ID: 103598)

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